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ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【エピローグ】
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お嬢様お世話係に就任してから、実質的な出勤はあの日の夜だけ。おそらくだが、お嬢様から呼び出しがない限り、一里之が現場に赴くことはないのだろう。
はたから見れば実に楽な部署であろう。お嬢様に振り回されるのが激務だとしても、それが1ヶ月の内の数日――なんてことになれば、喜んで異動したがる人間も出てくるのではないだろうか。事実、お嬢様から解放されてしばらく。一里之は現在のポジションに納得しつつあった。
ただ、なぜゆえに自分がお嬢様お世話係などという部署に回されてしまったのかが知りたい。会社に自分の机はないわけであり、事実的な出向扱いだ。一緒に仕事をする仲間は、完全に会社とは無関係の鯖洲と冥だ。もっとも、冥とはまだ仕事をしたことがない。とりあえず、鯖洲は面倒なことを人に押し付けるタイプだということは良く分かった。
今の立場に満足するわけではないが、しかし渋々と受け入れつつあった一里之。けれども、この環境に慣れつつあったせいか、妙に腰が重たかった。
実は事故物件内覧の話が来ていた。その辺りはしっかり会社から連絡が来るのだから不思議だ。まるで会社とは関係ないようなことばかりさせておきながら、給料を出すのも会社だし、内覧の話を持ってくるのも会社だ。事故物件の内覧ということは、売りたい人間がいて、その物件を確認して来いということなのだろう。
そもそも、事故物件というものは、不動産会社にとって決してプラスになるものではない。幽霊なんて非科学的な存在なのかもしれないが、その不確かな存在が原因なのかは不明だとして、数ヶ月毎に住人が入れ替わったりする物件は確かにある。また、そこが事故物件だと説明する義務があるのは、次に借りる客のみであり、その後は説明義務がない。けれども、なぜか人の入れ替わりが激しい部屋があるのは事実である。なんだかんだと言って、事故物件というのは不動産会社にとって不良在庫である。それをわざわざ内覧して、下手をすれば会社で買い取ってしまうのだ。その理由が御令嬢のなかば趣味の延長線上にあると社員が知ったら、果たしてどうなることやら。
内覧に向かう日取りをそろそろ決めねばならないだろう。良くも悪くも環境に適応してしまった一里之は、枕元のスマートフォンに手を伸ばした。会社からのメールに今回の内覧に関する連絡先が記されていたはずだ。
はたから見れば実に楽な部署であろう。お嬢様に振り回されるのが激務だとしても、それが1ヶ月の内の数日――なんてことになれば、喜んで異動したがる人間も出てくるのではないだろうか。事実、お嬢様から解放されてしばらく。一里之は現在のポジションに納得しつつあった。
ただ、なぜゆえに自分がお嬢様お世話係などという部署に回されてしまったのかが知りたい。会社に自分の机はないわけであり、事実的な出向扱いだ。一緒に仕事をする仲間は、完全に会社とは無関係の鯖洲と冥だ。もっとも、冥とはまだ仕事をしたことがない。とりあえず、鯖洲は面倒なことを人に押し付けるタイプだということは良く分かった。
今の立場に満足するわけではないが、しかし渋々と受け入れつつあった一里之。けれども、この環境に慣れつつあったせいか、妙に腰が重たかった。
実は事故物件内覧の話が来ていた。その辺りはしっかり会社から連絡が来るのだから不思議だ。まるで会社とは関係ないようなことばかりさせておきながら、給料を出すのも会社だし、内覧の話を持ってくるのも会社だ。事故物件の内覧ということは、売りたい人間がいて、その物件を確認して来いということなのだろう。
そもそも、事故物件というものは、不動産会社にとって決してプラスになるものではない。幽霊なんて非科学的な存在なのかもしれないが、その不確かな存在が原因なのかは不明だとして、数ヶ月毎に住人が入れ替わったりする物件は確かにある。また、そこが事故物件だと説明する義務があるのは、次に借りる客のみであり、その後は説明義務がない。けれども、なぜか人の入れ替わりが激しい部屋があるのは事実である。なんだかんだと言って、事故物件というのは不動産会社にとって不良在庫である。それをわざわざ内覧して、下手をすれば会社で買い取ってしまうのだ。その理由が御令嬢のなかば趣味の延長線上にあると社員が知ったら、果たしてどうなることやら。
内覧に向かう日取りをそろそろ決めねばならないだろう。良くも悪くも環境に適応してしまった一里之は、枕元のスマートフォンに手を伸ばした。会社からのメールに今回の内覧に関する連絡先が記されていたはずだ。
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