43 / 391
ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【解決編】
3
しおりを挟む
遺体が発見された当時、外は記録的な大雪となっていた。奇しくも、その偶然たる出来事が、ある事実を浮き彫りにさせたのかもしれない。
「答えは至ってシンプル。首を吊った女性は雪が降る前にホテルに入っていた。もちろん、車もその時点で車庫の中にあったの」
単純かつ明快な答えだった。現場に首を吊った女性の車が残されていたことから、では雪が降っているのに、どうやって勾配のある峠を走ってホテルまでやって来たのか――という疑問が生じてしまうのであるが、それはすなわち、雪が降る前に到着していた……と考えれば解決する。
「――つまり、首を吊った女性達の前にホテルを利用していた客なんて存在していないの。いえ、強いて言うのであれば、首を吊った女性とそのお相手が利用したのかも知れないけどね」
あまりにも核心に迫るものだった。そして、それは一里之が抱いた疑問にも直結する。
「もしかして、そのお相手って――アルバイトの男性だったんじゃないですかね?」
「面白い発想ですわ。確かに、それならば雪がどれだけ降っても、歩いて峠を降りるなんていう命知らずな真似をしなくて済みますわね。管理小屋に戻ればいいだけですもの」
一里之の言葉に納得した様子のコトリ。アルバイトの男性が怪しいというのは、ロジックでもなんでもなく、一里之の勘だった。その勘が導き出したものを一里之は口にする。
「少なくとも、アルバイトの男性は部屋の車庫に車が停まっていることを知っていたんです。もし、車が停まっていないのならシャッターも開いていたはず。つまり、鍵なんてなくても部屋へと簡単に出入りすることが可能だったはず。それなのに、どうしてアルバイトの男性は鍵を持ち出したのか」
かつて、一里之には頭の切れる同級生がいた。異性の友人であるが、きっと彼女との付き合いがあったからこそ、このような時に多少は頭が回るようになったのかもしれない。
「――何が起きるか分からなかったから。念のために鍵を持ち出す必要があった。わたくしはそう思いますわ。まぁ、実際は何事もなく掃除を終えたのでしょう。何を掃除していたのかまでは、あえて言いませんわ」
蓋を開けてみれば、構造自体は実にシンプルで単純な事件なのだ。自分のアリバイを成立させるために、わざとその前にホテルへと入り、一定の時間……自分のアリバイが不確定な時間をホテルにて過ごしてアリバイを確保しようとした。
「答えは至ってシンプル。首を吊った女性は雪が降る前にホテルに入っていた。もちろん、車もその時点で車庫の中にあったの」
単純かつ明快な答えだった。現場に首を吊った女性の車が残されていたことから、では雪が降っているのに、どうやって勾配のある峠を走ってホテルまでやって来たのか――という疑問が生じてしまうのであるが、それはすなわち、雪が降る前に到着していた……と考えれば解決する。
「――つまり、首を吊った女性達の前にホテルを利用していた客なんて存在していないの。いえ、強いて言うのであれば、首を吊った女性とそのお相手が利用したのかも知れないけどね」
あまりにも核心に迫るものだった。そして、それは一里之が抱いた疑問にも直結する。
「もしかして、そのお相手って――アルバイトの男性だったんじゃないですかね?」
「面白い発想ですわ。確かに、それならば雪がどれだけ降っても、歩いて峠を降りるなんていう命知らずな真似をしなくて済みますわね。管理小屋に戻ればいいだけですもの」
一里之の言葉に納得した様子のコトリ。アルバイトの男性が怪しいというのは、ロジックでもなんでもなく、一里之の勘だった。その勘が導き出したものを一里之は口にする。
「少なくとも、アルバイトの男性は部屋の車庫に車が停まっていることを知っていたんです。もし、車が停まっていないのならシャッターも開いていたはず。つまり、鍵なんてなくても部屋へと簡単に出入りすることが可能だったはず。それなのに、どうしてアルバイトの男性は鍵を持ち出したのか」
かつて、一里之には頭の切れる同級生がいた。異性の友人であるが、きっと彼女との付き合いがあったからこそ、このような時に多少は頭が回るようになったのかもしれない。
「――何が起きるか分からなかったから。念のために鍵を持ち出す必要があった。わたくしはそう思いますわ。まぁ、実際は何事もなく掃除を終えたのでしょう。何を掃除していたのかまでは、あえて言いませんわ」
蓋を開けてみれば、構造自体は実にシンプルで単純な事件なのだ。自分のアリバイを成立させるために、わざとその前にホテルへと入り、一定の時間……自分のアリバイが不確定な時間をホテルにて過ごしてアリバイを確保しようとした。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どんでん返し
あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~
ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが…
(「薪」より)
嘘つきカウンセラーの饒舌推理
真木ハヌイ
ミステリー
身近な心の問題をテーマにした連作短編。六章構成。狡猾で奇妙なカウンセラーの男が、カウンセリングを通じて相談者たちの心の悩みの正体を解き明かしていく。ただ、それで必ずしも相談者が満足する結果になるとは限らないようで……?(カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる