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ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【解決編】

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 遺体が発見された当時、外は記録的な大雪となっていた。奇しくも、その偶然たる出来事が、ある事実を浮き彫りにさせたのかもしれない。

「答えは至ってシンプル。首を吊った女性は雪が降る前にホテルに入っていた。もちろん、車もその時点で車庫の中にあったの」

 単純かつ明快な答えだった。現場に首を吊った女性の車が残されていたことから、では雪が降っているのに、どうやって勾配のある峠を走ってホテルまでやって来たのか――という疑問が生じてしまうのであるが、それはすなわち、雪が降る前に到着していた……と考えれば解決する。


「――つまり、首を吊った女性達の前にホテルを利用していた客なんて存在していないの。いえ、強いて言うのであれば、首を吊った女性とそのお相手が利用したのかも知れないけどね」 

 あまりにも核心に迫るものだった。そして、それは一里之が抱いた疑問にも直結する。

「もしかして、そのお相手って――アルバイトの男性だったんじゃないですかね?」

「面白い発想ですわ。確かに、それならば雪がどれだけ降っても、歩いて峠を降りるなんていう命知らずな真似をしなくて済みますわね。管理小屋に戻ればいいだけですもの」

 一里之の言葉に納得した様子のコトリ。アルバイトの男性が怪しいというのは、ロジックでもなんでもなく、一里之の勘だった。その勘が導き出したものを一里之は口にする。

「少なくとも、アルバイトの男性は部屋の車庫に車が停まっていることを知っていたんです。もし、車が停まっていないのならシャッターも開いていたはず。つまり、鍵なんてなくても部屋へと簡単に出入りすることが可能だったはず。それなのに、どうしてアルバイトの男性は鍵を持ち出したのか」

 かつて、一里之には頭の切れる同級生がいた。異性の友人であるが、きっと彼女との付き合いがあったからこそ、このような時に多少は頭が回るようになったのかもしれない。

「――何が起きるか分からなかったから。念のために鍵を持ち出す必要があった。わたくしはそう思いますわ。まぁ、実際は何事もなく掃除を終えたのでしょう。何を掃除していたのかまでは、あえて言いませんわ」

 蓋を開けてみれば、構造自体は実にシンプルで単純な事件なのだ。自分のアリバイを成立させるために、わざとその前にホテルへと入り、一定の時間……自分のアリバイが不確定な時間をホテルにて過ごしてアリバイを確保しようとした。
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