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ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【出題編】
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鯖洲が住所を読み上げるが、こちらの土地勘がないうえに、聞き慣れていない住所を口にされたところで、操作が追いつくわけがない。スマホ世代ということで、なんとなくカーナビの操作方法は理解できたものの、当然ながらもたもたしてしまう。
「ったく、今のガキはカーナビの操作もできねぇのかよ。俺らみたいな世代より、よっぽどこういうの得意だろうが」
一里之が操作にもたついてたのを見かねたのか、横から手を伸ばしてくる鯖洲。ファイルとカーナビの操作画面へと視線を往復させながら、目的地らしき場所を設定する。少しばかり気になったのであるが、鯖洲が手にしているファイルから、時折金属が擦れ合うような音がするのはなぜだろう。
カーナビが案内を開始する旨を伝えると、画面の右下に到着予定時間が表示される。その予定時間――本日の午後6時過ぎ。一里之の会社は9時始業の8時間労働であるわけだが、これでは確実に残業である。
「さぁて、あのわがまま姫の病気が出やがったな。お前もついてるなぁ。就任初日に呼び出しなんてよ。とりあえず車出せよ。ちっと山奥になるみたいだし、暗くなる前に現地に到着しておきたい。急げよ」
鯖洲の言葉に、なんとなく嫌な予感を抱く一里之。さっきまでの話だと、今日はお嬢様とやらに挨拶をするだけのはずだったが、先ほどの電話から雰囲気が一変してしまった。明らかに高級車であろう車を運転しなければならないというだけで不安なのに、どうかこれ以上の不安要素を増やさないで欲しい。
助手席の鯖洲の機嫌をうかがいつつ、超絶な安全運転でナビに従って車を走らせる鯖洲。道中で鯖洲が寝てくれたから良かったものの、そうでなければ絶対に場がもたなかったと思う。義理と人情の世界に生きる方と、どんな会話をしていいものなのか。鯖洲が起きた際、場つなぎになるような話題を模索しつつ、黙々と車を運転する。
街中を抜けて、郊外へと出ると、街灯がまばらな峠道に入る。車通りも極端に少なく、向こう側から車のヘッドライトが見えると親近感を覚えてしまうほど、ひっそりとした峠道。のぼればのぼるほどに街灯の数も減っていく。誰が使うのだろうか。ゆるいカーブの先に設置してあった電話ボックスの薄暗い明りが、逆に不気味さを醸し出す。さらに車を走らせると、ナビが目的地周辺であることを告げ、こちらのことなどお構いなしといった具合でナビを勝手に終了させる。一里之は慌てて車を路肩に停め、ハザードをたくと辺りを見回した。
「ったく、今のガキはカーナビの操作もできねぇのかよ。俺らみたいな世代より、よっぽどこういうの得意だろうが」
一里之が操作にもたついてたのを見かねたのか、横から手を伸ばしてくる鯖洲。ファイルとカーナビの操作画面へと視線を往復させながら、目的地らしき場所を設定する。少しばかり気になったのであるが、鯖洲が手にしているファイルから、時折金属が擦れ合うような音がするのはなぜだろう。
カーナビが案内を開始する旨を伝えると、画面の右下に到着予定時間が表示される。その予定時間――本日の午後6時過ぎ。一里之の会社は9時始業の8時間労働であるわけだが、これでは確実に残業である。
「さぁて、あのわがまま姫の病気が出やがったな。お前もついてるなぁ。就任初日に呼び出しなんてよ。とりあえず車出せよ。ちっと山奥になるみたいだし、暗くなる前に現地に到着しておきたい。急げよ」
鯖洲の言葉に、なんとなく嫌な予感を抱く一里之。さっきまでの話だと、今日はお嬢様とやらに挨拶をするだけのはずだったが、先ほどの電話から雰囲気が一変してしまった。明らかに高級車であろう車を運転しなければならないというだけで不安なのに、どうかこれ以上の不安要素を増やさないで欲しい。
助手席の鯖洲の機嫌をうかがいつつ、超絶な安全運転でナビに従って車を走らせる鯖洲。道中で鯖洲が寝てくれたから良かったものの、そうでなければ絶対に場がもたなかったと思う。義理と人情の世界に生きる方と、どんな会話をしていいものなのか。鯖洲が起きた際、場つなぎになるような話題を模索しつつ、黙々と車を運転する。
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