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最終章 真相【過去 赤松朱里】
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当初の予定では、実際にミノタウロスの森で撮影を行う予定でいた。けれども、さすがに大人数が一気に田舎に押しかけると、嫌でも目立ってしまう。しかも、この段階で西尾朱里の実家は、あの場所からよその場所へと移ってしまっていた。今さら、その土地の人間の顔をして戻るわけにもいかないし、例えそれがまかり通っても、大勢の人間を引き連れてミノタウロスの森に入ることは無理だろう。
結局、協議をした結果、それに似たロケーションを見つけて撮影するということになった。いざ、撮影開始――となったわけだが、なんだかんだで集まったのはプロではなく素人ばかりだ。監督――なんて偉そうな肩書きがあったとしても、中身は素人に毛が生えた程度。中途半端にプライドだけは高いから扱いに困る。
撮影は予想していたよりも難航し、撮影が終わる頃には、ゆうに1年くらいの時間が経過していた。その間、七色七奈は何度となく店を訪れたが、しかし朱里のことには気づかなかった。その度に朱里は彼女に対するヘイトを高めた。
いよいよ、ビデオテープが完成した。しかも、あえてビデオテープの最後には、次のテープを探すような指示を入れて――だ。彼女のことだから、きっとビデオテープのことが気になり、それを追いかけようという気になってくれるはずだ。
彼女に見てもらおうではないか。自分がどのようになってしまったのか。小学校4年生という大事な時期に、七色七奈が離れてしまったことで、どんな化け物を生み出してしまったのかを実感してもらわねば。
何人もの人を殺した。七色七奈のせいで。彼女が今の今までずっと一緒にいてくれれば、こんなことにはならなかったはずだ。そう、全ては彼女が悪い。それがお門違いな責任転嫁であることに、西尾朱里は全く気づかなかった。いや、気づけなかった。歪んでしまった価値観と、七色七奈に対する執着心をこじらせてしまった彼女に、それは無理な話だったのだ。
こうして、記念すべき最初のビデオテープが投函された。あえてビデオテープにした理由は、いたってシンプル。ひとつは、実際に同じサイズのビデオテープで過去は撮影されているから。もうひとつは、再生するにも再生できないビデオテープに困り、彼女が店を頼ってくると思ったから。
案の定、しばらくしない内に彼女は店へとやってきた。彼女の話を聞いた店主は道具を揃え、ビデオテープを見る事ができる環境を作りあげた。それを店の奥から見守っていた西尾朱里は、しばらく休むとのメッセージを残して、七色七奈が動くのを待つことにした。
結局、協議をした結果、それに似たロケーションを見つけて撮影するということになった。いざ、撮影開始――となったわけだが、なんだかんだで集まったのはプロではなく素人ばかりだ。監督――なんて偉そうな肩書きがあったとしても、中身は素人に毛が生えた程度。中途半端にプライドだけは高いから扱いに困る。
撮影は予想していたよりも難航し、撮影が終わる頃には、ゆうに1年くらいの時間が経過していた。その間、七色七奈は何度となく店を訪れたが、しかし朱里のことには気づかなかった。その度に朱里は彼女に対するヘイトを高めた。
いよいよ、ビデオテープが完成した。しかも、あえてビデオテープの最後には、次のテープを探すような指示を入れて――だ。彼女のことだから、きっとビデオテープのことが気になり、それを追いかけようという気になってくれるはずだ。
彼女に見てもらおうではないか。自分がどのようになってしまったのか。小学校4年生という大事な時期に、七色七奈が離れてしまったことで、どんな化け物を生み出してしまったのかを実感してもらわねば。
何人もの人を殺した。七色七奈のせいで。彼女が今の今までずっと一緒にいてくれれば、こんなことにはならなかったはずだ。そう、全ては彼女が悪い。それがお門違いな責任転嫁であることに、西尾朱里は全く気づかなかった。いや、気づけなかった。歪んでしまった価値観と、七色七奈に対する執着心をこじらせてしまった彼女に、それは無理な話だったのだ。
こうして、記念すべき最初のビデオテープが投函された。あえてビデオテープにした理由は、いたってシンプル。ひとつは、実際に同じサイズのビデオテープで過去は撮影されているから。もうひとつは、再生するにも再生できないビデオテープに困り、彼女が店を頼ってくると思ったから。
案の定、しばらくしない内に彼女は店へとやってきた。彼女の話を聞いた店主は道具を揃え、ビデオテープを見る事ができる環境を作りあげた。それを店の奥から見守っていた西尾朱里は、しばらく休むとのメッセージを残して、七色七奈が動くのを待つことにした。
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