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最終章 真相【過去 赤松朱里】
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実際のところ、赤松朱里は高田達のおもちゃになった。空気の読めない言動、場を弁えない態度――それらを面白がるためだけに仲間に誘われたのだ。グループメールにも参加はしたが、しかしながら何か発言しても相手にされないし、悪口も言われたらしい。――らしいというのは、赤松朱里が文言をそのまま受け取ってしまい、それが皮肉混じりの悪口であるということに気づけなかったからだ。わざわざ依田由美香がそれを教えてくれた。
グループから離れてしまうのは簡単だった。けれども、一度高田達のグループに属してしまったせいで、一時期ヒエラルキーが低いグループの人達を馬鹿にしていた時期が生じてしまった。もちろん、今さらになって他のグループに入れてもらうわけにもいかなかった。結局のところ、孤独に戻るか、それとも高田のグループに属し続けるかの選択肢しかなく、そして赤松朱里は教室の隅にいるだけの高校生活は嫌だった。
きっと、そんな心情まで見透かされてしまっているのだろう。グループを抜けることができないのを分かっていながら、特に依田由美香と細川茜の遠回しな嫌がらせはエスカレートした。それでも、赤松朱里はヒエラルキーの上位にこだわった。ここから離れてしまったら、ヒエラルキーの下位……いいや、それにカウントさえされない位置まで転落してしまう。まだ高校生活は長いし、独りになるのだけは避けたかった。こんな時、七色七奈がいてくれれば、喜んでグループを抜けたのかもしれないが。
必死になってグループにしがみつく日々が続いていた矢先のこと。夏休みも間近ということもあり、自然とグループメールの流れは、夜の肝試しの話題へと切り替わった。そこで、高田達が知っているかどうかは微妙なところではあるが、彼女は何気なしにミノタウロスの森というワードを引っ張り出した。意外なことに、高田はその話題に食いついた。
なんでも、高田の家の畑がその近くにあり、前から気にはなっていたとのこと。距離的に自転車やバイクで行けないこともない距離だったこともあり、なんと赤松朱里の意見が採用され、ミノタウロスの森に向かう流れとなった。この時、彼女は気づいていたのだ。自分の中に極悪の感情――殺人衝動が芽生えたことに。
正直、他のメンバーがミノタウロスの森について、どう思っていたのかは分からない。けれども、グループのリーダーである高田がその気ならば、まるで問題はない。うまい具合に事は運んだ。
グループから離れてしまうのは簡単だった。けれども、一度高田達のグループに属してしまったせいで、一時期ヒエラルキーが低いグループの人達を馬鹿にしていた時期が生じてしまった。もちろん、今さらになって他のグループに入れてもらうわけにもいかなかった。結局のところ、孤独に戻るか、それとも高田のグループに属し続けるかの選択肢しかなく、そして赤松朱里は教室の隅にいるだけの高校生活は嫌だった。
きっと、そんな心情まで見透かされてしまっているのだろう。グループを抜けることができないのを分かっていながら、特に依田由美香と細川茜の遠回しな嫌がらせはエスカレートした。それでも、赤松朱里はヒエラルキーの上位にこだわった。ここから離れてしまったら、ヒエラルキーの下位……いいや、それにカウントさえされない位置まで転落してしまう。まだ高校生活は長いし、独りになるのだけは避けたかった。こんな時、七色七奈がいてくれれば、喜んでグループを抜けたのかもしれないが。
必死になってグループにしがみつく日々が続いていた矢先のこと。夏休みも間近ということもあり、自然とグループメールの流れは、夜の肝試しの話題へと切り替わった。そこで、高田達が知っているかどうかは微妙なところではあるが、彼女は何気なしにミノタウロスの森というワードを引っ張り出した。意外なことに、高田はその話題に食いついた。
なんでも、高田の家の畑がその近くにあり、前から気にはなっていたとのこと。距離的に自転車やバイクで行けないこともない距離だったこともあり、なんと赤松朱里の意見が採用され、ミノタウロスの森に向かう流れとなった。この時、彼女は気づいていたのだ。自分の中に極悪の感情――殺人衝動が芽生えたことに。
正直、他のメンバーがミノタウロスの森について、どう思っていたのかは分からない。けれども、グループのリーダーである高田がその気ならば、まるで問題はない。うまい具合に事は運んだ。
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