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最終章 真相【過去 赤松朱里】
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ミノタウロスはミノタウロスらしくしなければ。宝田羽衣と谷惇に関しては、やや自分のことを馬鹿にする傾向にある。一応、同じグループの人間という認識にはなっているが、最近になって、どうやら自分のことが鬱陶しいのか、仲間から外そうとしているような気がする。
――思い切り驚かせてやろう。ミノタウロスの森で本物のミノタウロスに遭遇。これほど、恐ろしいことはないだろう。こっちは牛のマスクを被っているわけだし、自分の正体がばれることはない。だから、思う存分やっても、自分にとって不利益になることはない。
ミノタウロスに扮装した赤松朱里は、ゆっくりと2人のほうへと向かう。基本的に入り口付近は一本道で狭い。そのまま迫ってしまうと奥に逃げられてしまうだろうから、あえて先へと回り込んだ。回り込む手段は簡単。真っ直ぐに伸びる獣道からそれ、木々が生い茂る森のほうへと回り込む。
足の踏み場がないわけではないし、音にだけ気をつければ、先回りすることは難しくないだろう。普通の感覚であれば、道のない森の中を突き進むのは避けたくなるだろうが、赤松朱里にとってはまったく気にならないことだった。
先回りをして、谷達を驚かせる。普段、やや冷遇されている赤松朱里からの、些細な復讐だ。
しばらく進むと、やや拓けた場所に出た。ここで谷達を待ち伏せてやろう。そんなことを考えつつ木々の切れ目から拓けた場所に出る。その際、茂みに足が触れてしまい、音を出してしまった。それに谷達が反応しないわけがなかった。何を話しているのかまでは聞き取れないが、大分焦っているようだ。
それもそのはず。いざ、心霊スポットに肝試しに行ったら、それらしき現象が起きてしまったようなものだ。存在しないと思っていた存在が、実は本当に存在するとなると、それほど怖いことはない。
ミノタウロスの森には、本当にミノタウロスがいる。それが分かっていれば、こんな危険な場所に足を踏み入れようとは思わないだろう。そんなものはいないと思っているから、肝試しをしようなんて流れになるのだ。
足音が聞こえる。それを受けて、茂みの影に隠れる。息を潜める、潜める、潜める、潜める。まるでかくれんぼで遊んでいるかのようなスリルがあった。
光が闇の中に踊る。しかし、それは小さな小さな光の輪だった。これだけの闇に覆われていては、とてもではないがまるで役に立たないが。
――思い切り驚かせてやろう。ミノタウロスの森で本物のミノタウロスに遭遇。これほど、恐ろしいことはないだろう。こっちは牛のマスクを被っているわけだし、自分の正体がばれることはない。だから、思う存分やっても、自分にとって不利益になることはない。
ミノタウロスに扮装した赤松朱里は、ゆっくりと2人のほうへと向かう。基本的に入り口付近は一本道で狭い。そのまま迫ってしまうと奥に逃げられてしまうだろうから、あえて先へと回り込んだ。回り込む手段は簡単。真っ直ぐに伸びる獣道からそれ、木々が生い茂る森のほうへと回り込む。
足の踏み場がないわけではないし、音にだけ気をつければ、先回りすることは難しくないだろう。普通の感覚であれば、道のない森の中を突き進むのは避けたくなるだろうが、赤松朱里にとってはまったく気にならないことだった。
先回りをして、谷達を驚かせる。普段、やや冷遇されている赤松朱里からの、些細な復讐だ。
しばらく進むと、やや拓けた場所に出た。ここで谷達を待ち伏せてやろう。そんなことを考えつつ木々の切れ目から拓けた場所に出る。その際、茂みに足が触れてしまい、音を出してしまった。それに谷達が反応しないわけがなかった。何を話しているのかまでは聞き取れないが、大分焦っているようだ。
それもそのはず。いざ、心霊スポットに肝試しに行ったら、それらしき現象が起きてしまったようなものだ。存在しないと思っていた存在が、実は本当に存在するとなると、それほど怖いことはない。
ミノタウロスの森には、本当にミノタウロスがいる。それが分かっていれば、こんな危険な場所に足を踏み入れようとは思わないだろう。そんなものはいないと思っているから、肝試しをしようなんて流れになるのだ。
足音が聞こえる。それを受けて、茂みの影に隠れる。息を潜める、潜める、潜める、潜める。まるでかくれんぼで遊んでいるかのようなスリルがあった。
光が闇の中に踊る。しかし、それは小さな小さな光の輪だった。これだけの闇に覆われていては、とてもではないがまるで役に立たないが。
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