158 / 203
第六章 アリアドネの嘘【現在 七色七奈】
12
しおりを挟む
「私、例のビデオテープを見ていて気がついたことがあるんです。それは、ある人物のせいで、まるで同系列のように見ていたんですが、それがもし同系列ではなかったとしたら?」
私の言葉の意味は、しっかり大和田には伝わってくれなかったらしい。助手席で困ったように言葉を詰まらせる大和田。
「それは、その――どういう意味なんだ? もう少し、俺にも分かるように説明してくれないか?」
私自身、回りくどい言い方をしてしまったなと思う。きっと、自分の推測に絶対の確信がない証拠なのだと思う。ただ、これで間違ってはいないはず。
「湯川智昭、丸山夏帆。この2人に関しては、同じテープの同じ画面内にいました。そして、この2人と赤松朱里が一緒だったことは間違いありません」
湯川智昭、丸山夏帆、赤松朱里。この3人に関しては、他の人間が殺害された時のアリバイがある。
「あぁ、そうだ。そうやって消去法で考えると、アリバイのない人間こそがミノタウロスということになる」
「でも、この時――高田富臣達が一緒だったとは限らない」
大和田の言葉に対して、間髪入れずに返してやった。大和田は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見せた。
「高田富臣達が……一緒じゃなかった?」
私は頷くと力強く「はい」とだけ答えた。
「私達が見てきたテープは、それぞれの場面が切り替わりながら、まるでひとつの物語のように進行していました。しかし、もしこのひとつの物語のように見えるものが、本当はふたつの物語だとしたら?」
そう――これが、私の答えだった。まだ分からないといった具合の大和田に、分かりやすく具体的に話を掘り下げた。
「つまり、湯川智昭達と高田富臣達がミノタウロスの森に入ったのは、まるで別の日なんです。同じビデオテープの中で、一緒くたにされているから、私達が勝手に同日に起きたものだと思い込んでいただけなんですよ」
まだ話についてこれないのか、大和田は困ったように首を傾げるだけだ。しかしながらちょうどいい。私自身も脳内で整理をするために、口に出して事実確認をしたほうがいいかもしれない。
「その証拠に、高田富臣達と湯川智昭達が合流することはなかったでしょう? それと同様に、宝田羽衣と谷惇もまた、高田富臣達とは一度たりとも会っていない。だからね――高田富臣達がミノタウロスの森に入った時系列と、湯川智昭達がミノタウロスの森に入った時系列は、別々かもしれないんです」
私の言葉の意味は、しっかり大和田には伝わってくれなかったらしい。助手席で困ったように言葉を詰まらせる大和田。
「それは、その――どういう意味なんだ? もう少し、俺にも分かるように説明してくれないか?」
私自身、回りくどい言い方をしてしまったなと思う。きっと、自分の推測に絶対の確信がない証拠なのだと思う。ただ、これで間違ってはいないはず。
「湯川智昭、丸山夏帆。この2人に関しては、同じテープの同じ画面内にいました。そして、この2人と赤松朱里が一緒だったことは間違いありません」
湯川智昭、丸山夏帆、赤松朱里。この3人に関しては、他の人間が殺害された時のアリバイがある。
「あぁ、そうだ。そうやって消去法で考えると、アリバイのない人間こそがミノタウロスということになる」
「でも、この時――高田富臣達が一緒だったとは限らない」
大和田の言葉に対して、間髪入れずに返してやった。大和田は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見せた。
「高田富臣達が……一緒じゃなかった?」
私は頷くと力強く「はい」とだけ答えた。
「私達が見てきたテープは、それぞれの場面が切り替わりながら、まるでひとつの物語のように進行していました。しかし、もしこのひとつの物語のように見えるものが、本当はふたつの物語だとしたら?」
そう――これが、私の答えだった。まだ分からないといった具合の大和田に、分かりやすく具体的に話を掘り下げた。
「つまり、湯川智昭達と高田富臣達がミノタウロスの森に入ったのは、まるで別の日なんです。同じビデオテープの中で、一緒くたにされているから、私達が勝手に同日に起きたものだと思い込んでいただけなんですよ」
まだ話についてこれないのか、大和田は困ったように首を傾げるだけだ。しかしながらちょうどいい。私自身も脳内で整理をするために、口に出して事実確認をしたほうがいいかもしれない。
「その証拠に、高田富臣達と湯川智昭達が合流することはなかったでしょう? それと同様に、宝田羽衣と谷惇もまた、高田富臣達とは一度たりとも会っていない。だからね――高田富臣達がミノタウロスの森に入った時系列と、湯川智昭達がミノタウロスの森に入った時系列は、別々かもしれないんです」
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
舞姫【中編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。
剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。
桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
亀岡
みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。
津田(郡司)武
星児と保が追う謎多き男。
切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。
大人になった少女の背中には、羽根が生える。
与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。
彼らの行く手に待つものは。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


この満ち足りた匣庭の中で 三章―Ghost of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
幾度繰り返そうとも、匣庭は――。
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
その裏では、医療センターによる謎めいた計画『WAWプログラム』が粛々と進行し、そして避け得ぬ惨劇が街を襲った。
舞台は繰り返す。
三度、二週間の物語は幕を開け、定められた終焉へと砂時計の砂は落ちていく。
変わらない世界の中で、真実を知悉する者は誰か。この世界の意図とは何か。
科学研究所、GHOST、ゴーレム計画。
人工地震、マイクロチップ、レッドアウト。
信号領域、残留思念、ブレイン・マシン・インターフェース……。
鬼の祟りに隠れ、暗躍する機関の影。
手遅れの中にある私たちの日々がほら――また、始まった。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる