126 / 203
第五章 時を越えた禁忌【現在 七色七奈】
3
しおりを挟む
先ほど、大和田からは夕食にとサンドイッチの差し入れがあった。そのおかげで、あまりお腹は空いていない。むしろ、今目の前に旅館の豪華な夕食が並んでいたとしても、私は食べることができなかったであろう。サンドイッチと缶ビール。今日のエネルギー摂取は、これにて充分のような気がする。
まだ時間も時間であるし、大和田に少し付き合ってもらっても罰は当たらないだろう。チョークを走らせる。
「まず、赤松朱里。今のところ彼女の場面のみ、彼女主観となっていますが、これはきっと変わらないでしょう」
登場人物その1。私にビデオテープ探しをさせているかもしれない張本人。赤松朱里。彼女に関しては、私にもよく分からないところがあったりする。独特な雰囲気の子であり、仲も良かったと思う。彼女が残した伝言のように、恨まれるような覚えもなければ、筋合いもないように思える。
「単独で動いているのは彼女のみ。他のメンバーは基本的にグループで動いています。まず、4人でミノタウロスの森に入り、早々にバラバラになってしまった2グループ。高田富臣と依田由美香、鏑木孝義と細川茜のグループです」
登場人物その2。赤松朱里がミノタウロスの森に入るのを確認してから森に入った4人組。しかも、意図的な理由で、森に入ってすぐに2組に分かれることになった。このうち、高田富臣に関しては生存不明。ホラー映画などでいうフラグは立っているのだろうが、しかしその後の動向は分からない。依田由美香は、残念ながら鏑木が生首を目撃している。
「高田富臣に関しては、現状で生存不明です。しかし、鏑木孝義、細川茜、依田由美香については――」
私の言葉が小さくなったことに気づいたのか、大和田が補足してくれる。
「死亡している可能性が高い。依田由美香は関しては、鏑木孝義の前に現れた牛首の人物の腰に生首が結えられていた。細川茜は鏑木孝義の目の前で殺されている。そして、あの状況から察するに、鏑木孝義もおそらくは死んでいるだろう」
私は大和田の補足に頷いた。
「そうだと思われます。そして、当たり前ですが湯川智昭はこの時点で生存しています。幼馴染だという丸山夏帆に関しても、この時点では生きています。もし、湯川智昭の言葉が本当だとすれば、この後、どこかのタイミングで丸山夏帆は死ぬことになるのでしょうが」
丸山夏帆はいずれ死んでしまうと思われるが、この時点ではまだ生存している。大和田が状況を整理する。
「鏑木孝義と細川茜が襲撃された時、湯川智昭と丸山夏帆、この2人と赤松朱里は一緒にいた――。つまり、この3人がミノタウロスになるのは難しい」
まだ時間も時間であるし、大和田に少し付き合ってもらっても罰は当たらないだろう。チョークを走らせる。
「まず、赤松朱里。今のところ彼女の場面のみ、彼女主観となっていますが、これはきっと変わらないでしょう」
登場人物その1。私にビデオテープ探しをさせているかもしれない張本人。赤松朱里。彼女に関しては、私にもよく分からないところがあったりする。独特な雰囲気の子であり、仲も良かったと思う。彼女が残した伝言のように、恨まれるような覚えもなければ、筋合いもないように思える。
「単独で動いているのは彼女のみ。他のメンバーは基本的にグループで動いています。まず、4人でミノタウロスの森に入り、早々にバラバラになってしまった2グループ。高田富臣と依田由美香、鏑木孝義と細川茜のグループです」
登場人物その2。赤松朱里がミノタウロスの森に入るのを確認してから森に入った4人組。しかも、意図的な理由で、森に入ってすぐに2組に分かれることになった。このうち、高田富臣に関しては生存不明。ホラー映画などでいうフラグは立っているのだろうが、しかしその後の動向は分からない。依田由美香は、残念ながら鏑木が生首を目撃している。
「高田富臣に関しては、現状で生存不明です。しかし、鏑木孝義、細川茜、依田由美香については――」
私の言葉が小さくなったことに気づいたのか、大和田が補足してくれる。
「死亡している可能性が高い。依田由美香は関しては、鏑木孝義の前に現れた牛首の人物の腰に生首が結えられていた。細川茜は鏑木孝義の目の前で殺されている。そして、あの状況から察するに、鏑木孝義もおそらくは死んでいるだろう」
私は大和田の補足に頷いた。
「そうだと思われます。そして、当たり前ですが湯川智昭はこの時点で生存しています。幼馴染だという丸山夏帆に関しても、この時点では生きています。もし、湯川智昭の言葉が本当だとすれば、この後、どこかのタイミングで丸山夏帆は死ぬことになるのでしょうが」
丸山夏帆はいずれ死んでしまうと思われるが、この時点ではまだ生存している。大和田が状況を整理する。
「鏑木孝義と細川茜が襲撃された時、湯川智昭と丸山夏帆、この2人と赤松朱里は一緒にいた――。つまり、この3人がミノタウロスになるのは難しい」
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
舞姫【中編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。
剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。
桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
亀岡
みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。
津田(郡司)武
星児と保が追う謎多き男。
切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。
大人になった少女の背中には、羽根が生える。
与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。
彼らの行く手に待つものは。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


この満ち足りた匣庭の中で 三章―Ghost of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
幾度繰り返そうとも、匣庭は――。
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
その裏では、医療センターによる謎めいた計画『WAWプログラム』が粛々と進行し、そして避け得ぬ惨劇が街を襲った。
舞台は繰り返す。
三度、二週間の物語は幕を開け、定められた終焉へと砂時計の砂は落ちていく。
変わらない世界の中で、真実を知悉する者は誰か。この世界の意図とは何か。
科学研究所、GHOST、ゴーレム計画。
人工地震、マイクロチップ、レッドアウト。
信号領域、残留思念、ブレイン・マシン・インターフェース……。
鬼の祟りに隠れ、暗躍する機関の影。
手遅れの中にある私たちの日々がほら――また、始まった。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる