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第四章 ミノタウロスはいる【現在 七色七奈】
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目的のビデオテープは見つかった。けれども、発覚しなくて良かったようなことも、ついでに発覚してしまった。
赤松朱里は、何を思って伝言を残したのか。また、その伝言にはどんな意味が残されているのだろうか。
――絶対に許さない。
瀬川先生が口にした言葉に、当時の赤松朱里の声が重なり、私の頭の中で反響する。
記憶を掘り返してみても、彼女に対して何か酷いことをしたわけでもなければ、恨まれる筋合いなんてない。むしろ、あの頃の時点で周囲から浮きつつあった彼女を、なんとか浮かないようにしていたのが私だった気がする。私がいなかったら、彼女は周りから孤立していたのかもしれないのだ。
大和田と一緒に教員室を出て、廊下をゆっくりと歩く。お互いに無言だった。そのまま学校を出て、私の車へと乗り込む。自然と大和田が運転席へと乗り込み、私は助手席へ。
「さっきの伝言、あんまり気にしないほうがいい。もしかしたら赤松朱里が何かを勘違いしているだけなのかもしれないし」
それに私は緩く頷く。
「少なくとも、私は彼女に恨まれるようなことはしていないはずなんです。それなのに、どうしてそんなことを言われないといけないのか――」
その伝言自体が、私に向けてのものではないという可能性もあった。しかし、どう考えても、伝言はビデオテープを探して回っている人間に向けられたものだ。そして、ビデオテープを探し回ることになるであろう人物は、一本目のビデオテープを受け取った私――ということになってしまうのではないか。
「とにかく、駐在所に戻ってビデオテープを確認してみよう。そうこうしている間に、きっと大将亭の若から連絡がくるはずだ」
車が発車する。ここに来る時は遅めの昼寝をさせてもらった私だが、帰りの道は寝る気になんてならなかった。見たことのない景色が次々と通り過ぎるのを眺めては、ずっと伝言の意味を考えていた。しかし、結局のところ意味は分からなかった。言葉のまま受け止めてしまえばそれまでなのだが、他に何か意味があって欲しかった。
大和田とも会話を交わしたが、きっと私は上の空だったのであろう。具体的にどんな話をしたのか覚えていない。
ずっと起きていたからだと思うが、帰りの道は随分と長く感じられた。知らない景色が延々続くのも、今の私にとっては、ささいなストレスになりつつあった。
駐在所に到着した頃には、もう日が傾き始めていた。
赤松朱里は、何を思って伝言を残したのか。また、その伝言にはどんな意味が残されているのだろうか。
――絶対に許さない。
瀬川先生が口にした言葉に、当時の赤松朱里の声が重なり、私の頭の中で反響する。
記憶を掘り返してみても、彼女に対して何か酷いことをしたわけでもなければ、恨まれる筋合いなんてない。むしろ、あの頃の時点で周囲から浮きつつあった彼女を、なんとか浮かないようにしていたのが私だった気がする。私がいなかったら、彼女は周りから孤立していたのかもしれないのだ。
大和田と一緒に教員室を出て、廊下をゆっくりと歩く。お互いに無言だった。そのまま学校を出て、私の車へと乗り込む。自然と大和田が運転席へと乗り込み、私は助手席へ。
「さっきの伝言、あんまり気にしないほうがいい。もしかしたら赤松朱里が何かを勘違いしているだけなのかもしれないし」
それに私は緩く頷く。
「少なくとも、私は彼女に恨まれるようなことはしていないはずなんです。それなのに、どうしてそんなことを言われないといけないのか――」
その伝言自体が、私に向けてのものではないという可能性もあった。しかし、どう考えても、伝言はビデオテープを探して回っている人間に向けられたものだ。そして、ビデオテープを探し回ることになるであろう人物は、一本目のビデオテープを受け取った私――ということになってしまうのではないか。
「とにかく、駐在所に戻ってビデオテープを確認してみよう。そうこうしている間に、きっと大将亭の若から連絡がくるはずだ」
車が発車する。ここに来る時は遅めの昼寝をさせてもらった私だが、帰りの道は寝る気になんてならなかった。見たことのない景色が次々と通り過ぎるのを眺めては、ずっと伝言の意味を考えていた。しかし、結局のところ意味は分からなかった。言葉のまま受け止めてしまえばそれまでなのだが、他に何か意味があって欲しかった。
大和田とも会話を交わしたが、きっと私は上の空だったのであろう。具体的にどんな話をしたのか覚えていない。
ずっと起きていたからだと思うが、帰りの道は随分と長く感じられた。知らない景色が延々続くのも、今の私にとっては、ささいなストレスになりつつあった。
駐在所に到着した頃には、もう日が傾き始めていた。
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