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第四章 ミノタウロスはいる【現在 七色七奈】
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「じゃあ、そのビデオテープを仕掛けて回っている人物――仮に犯人と呼ぶとして、その犯人は、この中学校の教員室にテープを隠せる人物ってことになる。もしかすると、学校関係者の中に――」
私の推論を否定するかのごとく、大和田は首を横に振った。
「いや、あり得なくもない話だけど、もし自分がその立場だったら、誰でも立ち入れるような場所にビデオテープを隠すな。限られた人物しか出入りできないところにテープを仕掛けても、自分が犯人だという可能性を提示するようなものだし」
大和田の推測も間違ってはいないだろう。テープを仕掛けて回るにあたり、わざわざ犯人が絞られるような真似をするとは思えない。なら、どうして犯人はこんなところにビデオテープを隠したのか。
「とりあえず教員室に向かおう。黙ってついてきてくれればいいから」
とにもかくにも、実際にテープがあるかどうかを確かめる必要があるだろう。机上の空論だけでは、一向に話も進まないだろうから。
ここから先は大和田のテリトリー。そもそも、この学校の存在を今日まで知らなかった私は、完全に蚊帳の外である。慣れたように、おそらく教員や来客用であろう玄関に入ると、スリッパに履き替える大和田。ついでに私の目の前にもスリッパを放り投げてくれる余裕っぷりである。
ありがたくスリッパへと履き替えると、大和田の後について歩く。しばらく歩くと、教員室らしき部屋の前へとたどり着いた。大和田は扉を軽くノックすると教員室の中へと入る。
「どうもー、駐在でーす」
昨今のセキュリティー意識は大きく変わり、昼間でも鍵をして、インターフォンで相手を確認してから対応する学校が多い中、この中学校に関しては、教員室までフリーで出入りできてしまう。今の時代、都会や田舎など関係なく、セキュリティー強化に努めていると思うのだが、どうやらこの辺りの学校は違うらしい。それだけ治安が良い証拠でもあるが、部外者の私がこうも簡単に入り込めてしまうのは問題だ。
これだけガバガバのセキュリティーならば、部外者が入り込んで、ビデオテープを隠すことも難しくないのではないだろうか。もちろん、教員室の中――となると、また違った難しさもあるだろうが。
「あぁ、大和田さん。今日はどうなさいました?」
きっと、先ほど連絡を入れていた相手であろう。ジャージを着た、白髪混じりの男性がやってくる。歳の頃は50代前半くらいか。やや細めの体型ゆえに、それなりにシワを刻んだ顔。でも、優しそうな人だった。
私の推論を否定するかのごとく、大和田は首を横に振った。
「いや、あり得なくもない話だけど、もし自分がその立場だったら、誰でも立ち入れるような場所にビデオテープを隠すな。限られた人物しか出入りできないところにテープを仕掛けても、自分が犯人だという可能性を提示するようなものだし」
大和田の推測も間違ってはいないだろう。テープを仕掛けて回るにあたり、わざわざ犯人が絞られるような真似をするとは思えない。なら、どうして犯人はこんなところにビデオテープを隠したのか。
「とりあえず教員室に向かおう。黙ってついてきてくれればいいから」
とにもかくにも、実際にテープがあるかどうかを確かめる必要があるだろう。机上の空論だけでは、一向に話も進まないだろうから。
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ありがたくスリッパへと履き替えると、大和田の後について歩く。しばらく歩くと、教員室らしき部屋の前へとたどり着いた。大和田は扉を軽くノックすると教員室の中へと入る。
「どうもー、駐在でーす」
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これだけガバガバのセキュリティーならば、部外者が入り込んで、ビデオテープを隠すことも難しくないのではないだろうか。もちろん、教員室の中――となると、また違った難しさもあるだろうが。
「あぁ、大和田さん。今日はどうなさいました?」
きっと、先ほど連絡を入れていた相手であろう。ジャージを着た、白髪混じりの男性がやってくる。歳の頃は50代前半くらいか。やや細めの体型ゆえに、それなりにシワを刻んだ顔。でも、優しそうな人だった。
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