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第四章 ミノタウロスはいる【現在 七色七奈】
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「赤松朱里がビデオカメラを回しているところ? 別に気味の悪いものなんて映ってなかったと思うんだけど」
赤松朱里は、湯川達と合流してから、ずっとカメラを回していた。途中、バッテリーが切れそうだとのことでビデオカメラを湯川に手渡してはいるが、それ以外は基本的にカメラは回っていたはず。
「――もしかして、あれが見えなかったのか? かなり、はっきり映っていたと思うんだけど」
大和田はそう言うと、ビデオデッキに手を伸ばし、ビデオの巻き戻しを始めた。画面に映像を映さずに巻き戻したほうが、確か巻き戻るスピードが多少なりとも早かったはず。ただ、おそらく問題のポイントを探し当てるために、わざわざ映像を写したまま巻き戻しているのだろう。何倍速かで逆再生される映像が不気味に見えた。
「おかしいなって思ったのは、赤松朱里がバッテリーを変えるからって、湯川智昭にビデオカメラを渡したところだ」
問題の地点まで巻き戻しを終えたのか、改めてそれを再生する大和田。指はそのまま停止ボタンへと添えられている。
赤松朱里の場面においては、基本的に赤松朱里の持つビデオカメラ目線で話が進む。途中で湯川智昭にビデオカメラを手渡すわけだが、それだって話の流れでようやく分かる程度だ。
「ほら、ここだ」
赤松朱里がバッテリーを変えたいと言い出し、ビデオカメラを湯川智昭へと渡す。その際、当然ながら画面はぶれてしまう。赤松朱里から湯川智昭へとビデオが渡る瞬間に限っては、誰もファインダーを覗かないのだから。その一瞬に、妙なものが映り込んでいた。ビデオを停止して、ようやく分かるようなもの。よくぞ再生している画面から見つけることができたものだ。
赤松朱里から湯川智昭へとビデオカメラが渡る瞬間、カメラは完全に明後日の方角を一瞬だけ映し出す。この明後日の方向には茂みがあるようなのだが、その茂みの中から――人の足らしきものが伸びているのだ。
「多分、この茂みの向こう側で倒れてるんだろうな。ちょうど茂みが良い具合に体を隠してしまっているから、足しか映っていないけど」
辺りが暗かったし、いちいち周囲を見渡しながら進むわけでもないから、きっと映像内の人物達も気づかなかったのであろう。
「これ――誰なんでしょう?」
当たり前だが、足しか映っていないのだから、それが誰のものなのかは分からない。ただ、ミノタウロスの森に足を踏み入れるなんて物好きはいないだろうから、赤松朱里の関係者であることは間違いないだろう。
赤松朱里は、湯川達と合流してから、ずっとカメラを回していた。途中、バッテリーが切れそうだとのことでビデオカメラを湯川に手渡してはいるが、それ以外は基本的にカメラは回っていたはず。
「――もしかして、あれが見えなかったのか? かなり、はっきり映っていたと思うんだけど」
大和田はそう言うと、ビデオデッキに手を伸ばし、ビデオの巻き戻しを始めた。画面に映像を映さずに巻き戻したほうが、確か巻き戻るスピードが多少なりとも早かったはず。ただ、おそらく問題のポイントを探し当てるために、わざわざ映像を写したまま巻き戻しているのだろう。何倍速かで逆再生される映像が不気味に見えた。
「おかしいなって思ったのは、赤松朱里がバッテリーを変えるからって、湯川智昭にビデオカメラを渡したところだ」
問題の地点まで巻き戻しを終えたのか、改めてそれを再生する大和田。指はそのまま停止ボタンへと添えられている。
赤松朱里の場面においては、基本的に赤松朱里の持つビデオカメラ目線で話が進む。途中で湯川智昭にビデオカメラを手渡すわけだが、それだって話の流れでようやく分かる程度だ。
「ほら、ここだ」
赤松朱里がバッテリーを変えたいと言い出し、ビデオカメラを湯川智昭へと渡す。その際、当然ながら画面はぶれてしまう。赤松朱里から湯川智昭へとビデオが渡る瞬間に限っては、誰もファインダーを覗かないのだから。その一瞬に、妙なものが映り込んでいた。ビデオを停止して、ようやく分かるようなもの。よくぞ再生している画面から見つけることができたものだ。
赤松朱里から湯川智昭へとビデオカメラが渡る瞬間、カメラは完全に明後日の方角を一瞬だけ映し出す。この明後日の方向には茂みがあるようなのだが、その茂みの中から――人の足らしきものが伸びているのだ。
「多分、この茂みの向こう側で倒れてるんだろうな。ちょうど茂みが良い具合に体を隠してしまっているから、足しか映っていないけど」
辺りが暗かったし、いちいち周囲を見渡しながら進むわけでもないから、きっと映像内の人物達も気づかなかったのであろう。
「これ――誰なんでしょう?」
当たり前だが、足しか映っていないのだから、それが誰のものなのかは分からない。ただ、ミノタウロスの森に足を踏み入れるなんて物好きはいないだろうから、赤松朱里の関係者であることは間違いないだろう。
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