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第二章 動き出す狂気【現在 七色七奈】
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自分で自覚しているよりも、さっきの映像は衝撃的だったのであろうか。お茶を流し込んで気づいたのだが、どうやら喉がカラカラに渇いていたらしい。
正直なところ一本目は実に平和だったと思う。赤松朱里が単独でミノタウロスの森に向かう前で終わるから当然だ。もちろん、二本目に関しても、赤松朱里にいたっては、怪我などはしていたようだが平和だった。
問題は二本目の後半だ。赤松朱里の、のほほんとした感じの映像から一転し、かなりのハイペースであり得ないことが起きてしまった。
登場人物は宝田羽衣という女の子と谷惇という男の子。いや、女の子、男の子と表現するほど幼くはなかったか。映像で見た限り、中学生後半から高校生前半くらいの年齢だろう。使用している移動手段が主に自転車ということから察するに、中学生後半くらいだと推察するのが妥当か。
谷惇は宝田羽衣にいいところを見せようとしたのか、音がした茂みのほうへと先行して捜索へと向かい、そして消息を経ってしまった。残された宝田羽衣も、何者かによって森の奥へと引き込まれてしまった。映像が途切れる直前に見えた牛の顔。まさか、あの森には本当にミノタウロスがいるというのか。だとしたら、宝田羽衣と谷惇はどうなってしまったのだろうか。
「それじゃ、行こうか――」
大和田はそう言うと、カウンターらしきところに白いプレートを立てた。
――不在です。ここでお待ちいただくか、緊急の方は下記電話番号まで。
もはや、これは田舎の駐在所ならではの必殺技ともいえよう。特に何事も起きない田舎だからこそ、駐在所を留守にすることができる。交番ならば、交代要員が絶対にいるだろうし、いざという時のためにも、そこを留守にするなんてことはない。基本的に平和で、何事も起きないことが当たり前の田舎だからこそ、通用するものである。また、これに文句を言う人もいないというのも、田舎らしいと言えよう。良く言えば穏やか。悪く言えば警戒心がまるでない。
「あの、留守にしても大丈夫なんですか?」
一応、社交辞令的なもので聞いておく。当然のように「大丈夫、大丈夫。どうせ何にも起きねぇから」との言葉が大和田から返ってきた。
元より一人で調べて回るつもりでいたが、いざ大和田が力を貸してくれるとなると、やはり一人では心細くなってしまう。しかも、このは小さい頃に住んでいた場所であり、子供心に怖かった場所なども多く存在する。杉谷の神社なんて、それの代表格とも言えるだろう。幼き日の記憶だからこそ、頭の根底にこびりついており、それが良くも悪くも記憶を改竄していたりする。
正直なところ一本目は実に平和だったと思う。赤松朱里が単独でミノタウロスの森に向かう前で終わるから当然だ。もちろん、二本目に関しても、赤松朱里にいたっては、怪我などはしていたようだが平和だった。
問題は二本目の後半だ。赤松朱里の、のほほんとした感じの映像から一転し、かなりのハイペースであり得ないことが起きてしまった。
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谷惇は宝田羽衣にいいところを見せようとしたのか、音がした茂みのほうへと先行して捜索へと向かい、そして消息を経ってしまった。残された宝田羽衣も、何者かによって森の奥へと引き込まれてしまった。映像が途切れる直前に見えた牛の顔。まさか、あの森には本当にミノタウロスがいるというのか。だとしたら、宝田羽衣と谷惇はどうなってしまったのだろうか。
「それじゃ、行こうか――」
大和田はそう言うと、カウンターらしきところに白いプレートを立てた。
――不在です。ここでお待ちいただくか、緊急の方は下記電話番号まで。
もはや、これは田舎の駐在所ならではの必殺技ともいえよう。特に何事も起きない田舎だからこそ、駐在所を留守にすることができる。交番ならば、交代要員が絶対にいるだろうし、いざという時のためにも、そこを留守にするなんてことはない。基本的に平和で、何事も起きないことが当たり前の田舎だからこそ、通用するものである。また、これに文句を言う人もいないというのも、田舎らしいと言えよう。良く言えば穏やか。悪く言えば警戒心がまるでない。
「あの、留守にしても大丈夫なんですか?」
一応、社交辞令的なもので聞いておく。当然のように「大丈夫、大丈夫。どうせ何にも起きねぇから」との言葉が大和田から返ってきた。
元より一人で調べて回るつもりでいたが、いざ大和田が力を貸してくれるとなると、やはり一人では心細くなってしまう。しかも、このは小さい頃に住んでいた場所であり、子供心に怖かった場所なども多く存在する。杉谷の神社なんて、それの代表格とも言えるだろう。幼き日の記憶だからこそ、頭の根底にこびりついており、それが良くも悪くも記憶を改竄していたりする。
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