ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
43 / 203
第二章 動き出す狂気【現在 七色七奈】

第二章 動き出す狂気【現在 七色七奈】1

しおりを挟む
【1】

「――なに、これ」

 砂嵐となった画面を眺めつつ、私が漏らした感想は、実に率直で正直なものだった。一緒に見ていた大和田も、その衝撃に首を傾げる。

「これ、途中から人が変わってるっていうか――まるで映画みたいな手法になってんな。怪我をした女の子の時は、女の子がビデオを撮影している形で映像が進むけど、次の2人組の時は俯瞰ふかんする形になってる」

 私が抱いた違和感の正体を、代弁するかのごとく並べ立ててくれる大和田。私は、ずっと彼女視点――赤松朱里がカメラマンとなって映像が続いていくものだとばかり思っていた。しかし、途中からカップルらしきものを映しているカメラは俯瞰撮影されているのだ。

 赤松朱里の時は、ビデオカメラがあることが前提で撮影されている。でも、後半の2人組の時は、カメラがあることが前提になっていない。つまり、後半のほうに関してはカメラマンが不明なのだ。

 ドラマなどを見ていても、カメラマンの存在が気になる人なんていないだろう。例えるならば、赤松朱里の映像のほうは、赤松朱里がカメラマンであることを明かしていて、それが前提となっている。一方、後半のほうはドラマ仕立てというか、カメラマンの存在を一切匂わさない作りになっていた。

「それと、後半の映像は画面が固定されていましたよね? どこかにカメラを固定して撮影したみたいに」

 私の言葉に大和田は頷く。

「あれだな。昔見た映画――ブレアウィッチだっけか? あれと同じ手法がとられているのが前半の映像。後半はごく一般的な映画みたいな形で撮影されてるんだな」

 この映像の手法の違いに何か意味があるのだろうか。それにしても、後半のほうは中々にショッキングな内容だった。あのミノタウロスらしき存在は、一体何者なんだろう。

 砂嵐が急に途切れる。そうだ――もしかすると、この後、どこに次のビデオテープが隠されているかを示唆するものが映るかもしれない。そんなことを考えながら画面を眺めていると、その前に妙なものが映った。

 ――出演 赤松朱里 宝田羽衣 谷惇。

 一瞬、なんのことかと思ったが、すぐに理解した。これ――おそらく、これまでの映像で出てきた人達のことだ。赤松朱里は当たり前ながら、宝田羽衣と谷惇というのは……映像の後半に出てきたカップルのことなのだろうか。

「これ、もしかして作り物なんじゃねぇの? ほら、学校とかに映画研究会みたいなのあったろ? あれのノリで作られた映画だったりして」

 大和田が言うそばで、映像がまたして切り替わる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...