32 / 203
第一章 好奇心の代償【現在 七色七奈】
19
しおりを挟む
ミノタウロスの森は、ある意味で子供達のトラウマだ。絶対に入ってはいけないと大人達から口酸っぱく言われ、そして私は一度も足を踏み入れることなく、この土地を離れてしまった。もし、もう少し大人になるまで、この土地にいたら、私はミノタウロスの森に足を踏み入れてしまったのだろうか。好奇心が溢れ、なんでもできるように勘違いしてしまう年頃に。それこそ、赤松朱里のように。
「確かに、肝試しするにはもってこいの場所かもしれねぇ。でも、俺がここに赴任してから、まだ一度も、それ関係で通報があったことはないから不思議なんだよなぁ」
いい加減、独特な喋り方に慣れてきた。小さい頃は、この独特なイントネーションが苦手だったが、今になって聞いてみると、なかなかに味があって可愛らしい。田舎特有の、のんびりした空気が漂ってくるようだ。
「それって、通報がないだけじゃ? この辺りでミノタウロスの森といえば、かなり有名なはずだし、入り口にあんな不気味な鳥居がある場所なんて、間違いなく心霊スポットにでもなりそうですけど」
赤松朱里のように、歳を取れば怖いもの見たさでミノタウロスの森に入りたがる輩は必ずいる。この辺りにとどまらず、色々なところから押し寄せて来そうなものだが。
「いいや、この辺りの人達だからこそ、ミノタウロスの森の近くで人が騒いでいたら、必ず俺のところに通報がある。他の土地から来るってことは車だろうし、夜になれば嫌でもヘッドライトが目立つからな。俺もミノタウロスの森の話を聞いた時、どうせ夏場はそれ関係の通報で忙しくなるだろうと思ってたんだけど、とんだ拍子抜けだったのを覚えてる」
――ミノタウロスの森に遊び半分で近づく者はいない。そうとでも言いたいのであろうか。まさに、心霊スポット巡りが好きな人間が飛びつきそうな場所なのに。
ビデオの準備ができた。後は再生ボタンを押せばテープが再生されることであろう。おそらく、ミノタウロスの森に足を踏み入れることになるであろう内容のビデオテープは、ある意味で貴重なのかもしれない。誰も近寄らない場所を撮影したものになっているのだろうから。
「えっと、それじゃ再生しますね」
私はそう言いながら再生ボタンを押す。音を立ててテープが回り出し、画面に映像が流れ始める。
この時点で大和田は巻き込まれてしまっていだのだと思う。いや、私が巻き込んでしまったのだと思う。
あのミノタウロスの森の呪いに。
「確かに、肝試しするにはもってこいの場所かもしれねぇ。でも、俺がここに赴任してから、まだ一度も、それ関係で通報があったことはないから不思議なんだよなぁ」
いい加減、独特な喋り方に慣れてきた。小さい頃は、この独特なイントネーションが苦手だったが、今になって聞いてみると、なかなかに味があって可愛らしい。田舎特有の、のんびりした空気が漂ってくるようだ。
「それって、通報がないだけじゃ? この辺りでミノタウロスの森といえば、かなり有名なはずだし、入り口にあんな不気味な鳥居がある場所なんて、間違いなく心霊スポットにでもなりそうですけど」
赤松朱里のように、歳を取れば怖いもの見たさでミノタウロスの森に入りたがる輩は必ずいる。この辺りにとどまらず、色々なところから押し寄せて来そうなものだが。
「いいや、この辺りの人達だからこそ、ミノタウロスの森の近くで人が騒いでいたら、必ず俺のところに通報がある。他の土地から来るってことは車だろうし、夜になれば嫌でもヘッドライトが目立つからな。俺もミノタウロスの森の話を聞いた時、どうせ夏場はそれ関係の通報で忙しくなるだろうと思ってたんだけど、とんだ拍子抜けだったのを覚えてる」
――ミノタウロスの森に遊び半分で近づく者はいない。そうとでも言いたいのであろうか。まさに、心霊スポット巡りが好きな人間が飛びつきそうな場所なのに。
ビデオの準備ができた。後は再生ボタンを押せばテープが再生されることであろう。おそらく、ミノタウロスの森に足を踏み入れることになるであろう内容のビデオテープは、ある意味で貴重なのかもしれない。誰も近寄らない場所を撮影したものになっているのだろうから。
「えっと、それじゃ再生しますね」
私はそう言いながら再生ボタンを押す。音を立ててテープが回り出し、画面に映像が流れ始める。
この時点で大和田は巻き込まれてしまっていだのだと思う。いや、私が巻き込んでしまったのだと思う。
あのミノタウロスの森の呪いに。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説



セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ミス研喫茶の秘密(雨音 れいす) ― 5分間ミステリバックナンバーVol.1 ―
筑波大学ミステリー研究会
ミステリー
【バックナンバーは、どの作品からでも問題なく読めます】
とある大学の学園祭を訪れた「私」は、ミステリー研究会が出店する喫茶店を訪れる。
穏やかな時間を楽しむ「私」だったが、喫茶店について、ある違和感を拭えずにいた。
その違和感とは一体――?
-----------------
筑波大学学園祭「雙峰祭」にて、筑波大学ミステリー研究会が出店する喫茶店で、毎年出題しているミステリクイズ、「5分間ミステリ」のバックナンバーです。解答編は、問題編公開の翌日に公開されます。
5分間と書いていますが、時間制限はありません。
Vol.1は、2016年に出題された問題。
問題文をよく読んで、あまり深く考えないで答えてみてください。
なお、実際の喫茶店は、もっと賑わっておりますので、ご安心ください。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる