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第一章 好奇心の代償【現在 七色七奈】
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「車を学校なんかに停めとくと目立つから、駐在所まで乗って来て。特にここら辺の人は余所者を珍しがるから。悪意はないんだけど、気に障ったらごめんね」
警察官と一緒に学校を出る。私の勝手な印象ではあるが、そこまで悪い人ではないらしい。まぁ、警察官なのだから、悪人という可能性は低いが、妙に偉そうにしている警察官ならば、これまでの人生の中で何度か遭遇している。そういう人に比べれば、俗にいう駐在さんは優しそうだった。本音と建前をうまく使い分けているみたいだし。
「俺が先導すっと、まるで見世物みたいになってしまうから、先に駐在所に戻ってます。少ししてから駐在所に寄ってください」
一応、形式ぶった喋り方をしたのち、私に向かって敬礼をした警察官。てっきりパトカーに乗るものだとばかり思っていたら、彼は前庭に停めてあった自転車にまたがる。どうやら、その自転車が彼のパトロールカーのようだ。
良くも悪くもここは田舎だ。私がさっき言われたことを無視して帰ってしまう――なんてことは考えていないのであろう。仕事とはいえ、近所から通報を受け、わざわざ私を注意するためだけに自転車をこいだのだ。しかも、一般的にはまだ早朝と呼ばれる時間帯にだ。そこまでやってもらったのだから、彼の顔を立てることくらいしておいてもいいだろう。それに、昔住んでいたとはいえ、私はこの辺りの土地勘がない。それにくわえて、どこに行っても余所者扱いされることになるだろう。この地域の駐在ながら、一線を引いているように見えた警察官の彼には、随分と親近感のようなものを覚えた。
車に乗り込むと、自然と周囲を見渡してしまう。良くも悪くもコミニュティーが密であり、悪く言ってしまえば監視社会となってしまっている田舎の街。私は少しばかり車の中で時間を潰すと、彼との約束を果たすために駐在所に向かうことにした。
学校に来るときに目印にしたくらいだから、迷うことなく駐在所に到着することができた。駐在所というのは名前の通り、警察官が駐在している場所を指す。交番との大きな違いは、住宅が一緒になっているかどうかだ。すなわち、この街の駐在さんは、駐在所に住み込む形で警察官をやっているわけだ。周りの目もあるだろうし、居心地が悪いのだろうなぁ――住宅が併設されている駐在所を眺めて、私は大きく溜め息をひとつ。すぐに駐在所の中から例の彼が出てきて、隣の駐車場へと案内してくれた。
警察官と一緒に学校を出る。私の勝手な印象ではあるが、そこまで悪い人ではないらしい。まぁ、警察官なのだから、悪人という可能性は低いが、妙に偉そうにしている警察官ならば、これまでの人生の中で何度か遭遇している。そういう人に比べれば、俗にいう駐在さんは優しそうだった。本音と建前をうまく使い分けているみたいだし。
「俺が先導すっと、まるで見世物みたいになってしまうから、先に駐在所に戻ってます。少ししてから駐在所に寄ってください」
一応、形式ぶった喋り方をしたのち、私に向かって敬礼をした警察官。てっきりパトカーに乗るものだとばかり思っていたら、彼は前庭に停めてあった自転車にまたがる。どうやら、その自転車が彼のパトロールカーのようだ。
良くも悪くもここは田舎だ。私がさっき言われたことを無視して帰ってしまう――なんてことは考えていないのであろう。仕事とはいえ、近所から通報を受け、わざわざ私を注意するためだけに自転車をこいだのだ。しかも、一般的にはまだ早朝と呼ばれる時間帯にだ。そこまでやってもらったのだから、彼の顔を立てることくらいしておいてもいいだろう。それに、昔住んでいたとはいえ、私はこの辺りの土地勘がない。それにくわえて、どこに行っても余所者扱いされることになるだろう。この地域の駐在ながら、一線を引いているように見えた警察官の彼には、随分と親近感のようなものを覚えた。
車に乗り込むと、自然と周囲を見渡してしまう。良くも悪くもコミニュティーが密であり、悪く言ってしまえば監視社会となってしまっている田舎の街。私は少しばかり車の中で時間を潰すと、彼との約束を果たすために駐在所に向かうことにした。
学校に来るときに目印にしたくらいだから、迷うことなく駐在所に到着することができた。駐在所というのは名前の通り、警察官が駐在している場所を指す。交番との大きな違いは、住宅が一緒になっているかどうかだ。すなわち、この街の駐在さんは、駐在所に住み込む形で警察官をやっているわけだ。周りの目もあるだろうし、居心地が悪いのだろうなぁ――住宅が併設されている駐在所を眺めて、私は大きく溜め息をひとつ。すぐに駐在所の中から例の彼が出てきて、隣の駐車場へと案内してくれた。
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