26 / 203
第一章 好奇心の代償【現在 七色七奈】
13
しおりを挟む
「車を学校なんかに停めとくと目立つから、駐在所まで乗って来て。特にここら辺の人は余所者を珍しがるから。悪意はないんだけど、気に障ったらごめんね」
警察官と一緒に学校を出る。私の勝手な印象ではあるが、そこまで悪い人ではないらしい。まぁ、警察官なのだから、悪人という可能性は低いが、妙に偉そうにしている警察官ならば、これまでの人生の中で何度か遭遇している。そういう人に比べれば、俗にいう駐在さんは優しそうだった。本音と建前をうまく使い分けているみたいだし。
「俺が先導すっと、まるで見世物みたいになってしまうから、先に駐在所に戻ってます。少ししてから駐在所に寄ってください」
一応、形式ぶった喋り方をしたのち、私に向かって敬礼をした警察官。てっきりパトカーに乗るものだとばかり思っていたら、彼は前庭に停めてあった自転車にまたがる。どうやら、その自転車が彼のパトロールカーのようだ。
良くも悪くもここは田舎だ。私がさっき言われたことを無視して帰ってしまう――なんてことは考えていないのであろう。仕事とはいえ、近所から通報を受け、わざわざ私を注意するためだけに自転車をこいだのだ。しかも、一般的にはまだ早朝と呼ばれる時間帯にだ。そこまでやってもらったのだから、彼の顔を立てることくらいしておいてもいいだろう。それに、昔住んでいたとはいえ、私はこの辺りの土地勘がない。それにくわえて、どこに行っても余所者扱いされることになるだろう。この地域の駐在ながら、一線を引いているように見えた警察官の彼には、随分と親近感のようなものを覚えた。
車に乗り込むと、自然と周囲を見渡してしまう。良くも悪くもコミニュティーが密であり、悪く言ってしまえば監視社会となってしまっている田舎の街。私は少しばかり車の中で時間を潰すと、彼との約束を果たすために駐在所に向かうことにした。
学校に来るときに目印にしたくらいだから、迷うことなく駐在所に到着することができた。駐在所というのは名前の通り、警察官が駐在している場所を指す。交番との大きな違いは、住宅が一緒になっているかどうかだ。すなわち、この街の駐在さんは、駐在所に住み込む形で警察官をやっているわけだ。周りの目もあるだろうし、居心地が悪いのだろうなぁ――住宅が併設されている駐在所を眺めて、私は大きく溜め息をひとつ。すぐに駐在所の中から例の彼が出てきて、隣の駐車場へと案内してくれた。
警察官と一緒に学校を出る。私の勝手な印象ではあるが、そこまで悪い人ではないらしい。まぁ、警察官なのだから、悪人という可能性は低いが、妙に偉そうにしている警察官ならば、これまでの人生の中で何度か遭遇している。そういう人に比べれば、俗にいう駐在さんは優しそうだった。本音と建前をうまく使い分けているみたいだし。
「俺が先導すっと、まるで見世物みたいになってしまうから、先に駐在所に戻ってます。少ししてから駐在所に寄ってください」
一応、形式ぶった喋り方をしたのち、私に向かって敬礼をした警察官。てっきりパトカーに乗るものだとばかり思っていたら、彼は前庭に停めてあった自転車にまたがる。どうやら、その自転車が彼のパトロールカーのようだ。
良くも悪くもここは田舎だ。私がさっき言われたことを無視して帰ってしまう――なんてことは考えていないのであろう。仕事とはいえ、近所から通報を受け、わざわざ私を注意するためだけに自転車をこいだのだ。しかも、一般的にはまだ早朝と呼ばれる時間帯にだ。そこまでやってもらったのだから、彼の顔を立てることくらいしておいてもいいだろう。それに、昔住んでいたとはいえ、私はこの辺りの土地勘がない。それにくわえて、どこに行っても余所者扱いされることになるだろう。この地域の駐在ながら、一線を引いているように見えた警察官の彼には、随分と親近感のようなものを覚えた。
車に乗り込むと、自然と周囲を見渡してしまう。良くも悪くもコミニュティーが密であり、悪く言ってしまえば監視社会となってしまっている田舎の街。私は少しばかり車の中で時間を潰すと、彼との約束を果たすために駐在所に向かうことにした。
学校に来るときに目印にしたくらいだから、迷うことなく駐在所に到着することができた。駐在所というのは名前の通り、警察官が駐在している場所を指す。交番との大きな違いは、住宅が一緒になっているかどうかだ。すなわち、この街の駐在さんは、駐在所に住み込む形で警察官をやっているわけだ。周りの目もあるだろうし、居心地が悪いのだろうなぁ――住宅が併設されている駐在所を眺めて、私は大きく溜め息をひとつ。すぐに駐在所の中から例の彼が出てきて、隣の駐車場へと案内してくれた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
ダブルの謎
KT
ミステリー
舞台は、港町横浜。ある1人の男が水死した状態で見つかった。しかし、その水死したはずの男を捜査1課刑事の正行は、目撃してしまう。ついに事件は誰も予想がつかない状況に発展していく。真犯人は一体誰で、何のために、、 読み出したら止まらない、迫力満点短編ミステリー
舞姫【中編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。
剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。
桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
亀岡
みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。
津田(郡司)武
星児と保が追う謎多き男。
切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。
大人になった少女の背中には、羽根が生える。
与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。
彼らの行く手に待つものは。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる