2 / 203
プロローグ
2
しおりを挟む
カウンターの中でしゃがみ込むと、何やら在庫を漁っているような音が続く。ぶつぶつと「確かここにあったはずだがなぁ」との本田さんの独り言を聞きつつ、西尾さんから出してもらったコーヒーを一口。なんだかホッとするような味だった。
「あったあった。VHSアダプターと小型のビデオデッキだ。VHSアダプターに8ミリビデオテープをはめ込んで、ビデオデッキで再生してみればいい。あぁ、テレビと繋ぐには黄色と赤と白の線を、ひとつずつビデオデッキとテレビの裏側に繋いでやればいいから」
本田さんが取り出したるは、埃のかぶったVHSアダプターなるものと、配線がついたままの小型のビデオデッキだった。保管状況から察するに、どう考えても売り物のようには思えないのであるが。
「それで、おいくらになる?」
私とて女独り身で生計を立てている身だ。稼ぎはそんなに多くはないが、本田さんが用意したものを購入するくらいの余裕はある――はずだ。財布を取り出しながら問うと、本田さんはしばらく考え込んだのちにこう言ってくれた。
「七奈ちゃんは、うちの数少ない若くて美人の常連さんだからな。今回は特別に貸し出しって形でいいってことにしとくよ」
自己分析ではあるが、私の性格はかなりサバサバしており、またお洒落というものに興味がないせいか、格好や化粧は機能性を重視する。暑ければ薄着をするし、寒ければ多少見てくれが悪くとも厚着をする。化粧も必要最低のことしかしない。貧相な目を大きく見せたところで、実際に自分の目が大きくなるわけではないから。ただ、その程度の化粧でも、ある程度は美人の部類に入るという自負はあった。だからといって彼氏がいるわけではない。なんというか、まだ23歳であるし、今は仕事に打ち込みたい。恋愛やら結婚という要素は、もう少し人生の後半に残しておきたかった――なんていうと格好がいいのかもしれない。正直なところ、全ては面倒くさいで片付けることができる。
「本田さん。そんなことを言っても、何も出ないけど」
冗談じみて返すと、本田さんは丁寧にVHSアダプターとビデオデッキを紙袋に詰めてくれながら「いやいや、奈々ちゃん目当てで店にくる常連さんだっているんだからな」と一言。人生におけるモテ期が到来しているのかもしれないが、私が知っている限り、ここの常連さんは若くても本田さんと同じ50代くらい。大半が70歳過ぎのお爺様方だ。まぁ、それでも悪い気はしない。
「あったあった。VHSアダプターと小型のビデオデッキだ。VHSアダプターに8ミリビデオテープをはめ込んで、ビデオデッキで再生してみればいい。あぁ、テレビと繋ぐには黄色と赤と白の線を、ひとつずつビデオデッキとテレビの裏側に繋いでやればいいから」
本田さんが取り出したるは、埃のかぶったVHSアダプターなるものと、配線がついたままの小型のビデオデッキだった。保管状況から察するに、どう考えても売り物のようには思えないのであるが。
「それで、おいくらになる?」
私とて女独り身で生計を立てている身だ。稼ぎはそんなに多くはないが、本田さんが用意したものを購入するくらいの余裕はある――はずだ。財布を取り出しながら問うと、本田さんはしばらく考え込んだのちにこう言ってくれた。
「七奈ちゃんは、うちの数少ない若くて美人の常連さんだからな。今回は特別に貸し出しって形でいいってことにしとくよ」
自己分析ではあるが、私の性格はかなりサバサバしており、またお洒落というものに興味がないせいか、格好や化粧は機能性を重視する。暑ければ薄着をするし、寒ければ多少見てくれが悪くとも厚着をする。化粧も必要最低のことしかしない。貧相な目を大きく見せたところで、実際に自分の目が大きくなるわけではないから。ただ、その程度の化粧でも、ある程度は美人の部類に入るという自負はあった。だからといって彼氏がいるわけではない。なんというか、まだ23歳であるし、今は仕事に打ち込みたい。恋愛やら結婚という要素は、もう少し人生の後半に残しておきたかった――なんていうと格好がいいのかもしれない。正直なところ、全ては面倒くさいで片付けることができる。
「本田さん。そんなことを言っても、何も出ないけど」
冗談じみて返すと、本田さんは丁寧にVHSアダプターとビデオデッキを紙袋に詰めてくれながら「いやいや、奈々ちゃん目当てで店にくる常連さんだっているんだからな」と一言。人生におけるモテ期が到来しているのかもしれないが、私が知っている限り、ここの常連さんは若くても本田さんと同じ50代くらい。大半が70歳過ぎのお爺様方だ。まぁ、それでも悪い気はしない。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説



セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる