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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【プロローグ】
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姫乙の意図が分からない。それは安藤の理解力が低いからなのか、それとも姫乙の言っていることがぶっ飛んでいるのか。質問をした本田自身が「あぁ?」と不機嫌そうな声を上げたから、きっと後者のほうなのだろう。
「いや、ですからね本田君。復讐のやり方はひとつだけではないと、姫乙は諸君らに――特にアベンジャーに知って欲しいのですぅ。この中にはね、クラスメイトを殺しても罪に問われることなく、仮に正体が暴かれても追放されるだけで済む特権を与えられた人がいるんですよぉぉぉ。それなのに、誰も復讐を実行しようとしやしねぇ。殺し放題なのに。殺し無双なのに」
絶対的に安全なはずのアベンジャーが、追放された直後に被害者生徒の親族から袋叩きにされ、そして死亡した。それは直接現場を見ていなくとも、ここにいる全員が知っているだろう。郷野が死んだ――。追放されるだけだったはずの郷野が、袋叩きにされて死んだ。その事実がある以上、アベンジャーとて簡単に動くわけにはいかない。追放されるだけ――なんてのは、あくまでも国との取り決めにすぎないのだ。
「私とてぇ、毎日毎日【姫乙史】をやっているわけにはいかないんですよぉ。ですのでぇ、もう姫乙のほうからアベンジャーの1人を選びましてぇ、ちょっと相談をさせていただきましたぁ」
姫乙の言葉に空気がほんの少し歪んだような気がした。露骨に辺りをキョロキョロとする者はいなかったが、なんだかクラス全体が互いに互いを警戒しているような空気。認めたくはないが、疑心暗鬼の雰囲気が漂っていた。それは、分かっていながらも誰もが触れなかった部分。まだ、このクラスには特権を与えられたアベンジャーが混じっているという事実が根底にある。
「相談の結果、アベンジャーも応じてくれましたぁ。すなわちぃ【糾弾ホームルーム】内にて【レクリエーション】を行うことをねぇ。やはり、パターンをぶち壊していかねばならないのですぅ。まずはぁ、その幻想をぶち殺さねばならないのですぅ」
まだ飲み込めない。残念ながら、まだ姫乙が何を言いたいのか飲み込めない。彼の言い分から察するに、とあるアベンジャーと相談して【糾弾ホームルーム】で【レクリエーション】を行うことになったというだけのようだが。
「さてぇ、いまだに状況を飲み込めていない方が多いみたいですねぇ――。つまり現状はどういうことになっているのかぁ、説明してあげられる方はいますかぁ?」
「いや、ですからね本田君。復讐のやり方はひとつだけではないと、姫乙は諸君らに――特にアベンジャーに知って欲しいのですぅ。この中にはね、クラスメイトを殺しても罪に問われることなく、仮に正体が暴かれても追放されるだけで済む特権を与えられた人がいるんですよぉぉぉ。それなのに、誰も復讐を実行しようとしやしねぇ。殺し放題なのに。殺し無双なのに」
絶対的に安全なはずのアベンジャーが、追放された直後に被害者生徒の親族から袋叩きにされ、そして死亡した。それは直接現場を見ていなくとも、ここにいる全員が知っているだろう。郷野が死んだ――。追放されるだけだったはずの郷野が、袋叩きにされて死んだ。その事実がある以上、アベンジャーとて簡単に動くわけにはいかない。追放されるだけ――なんてのは、あくまでも国との取り決めにすぎないのだ。
「私とてぇ、毎日毎日【姫乙史】をやっているわけにはいかないんですよぉ。ですのでぇ、もう姫乙のほうからアベンジャーの1人を選びましてぇ、ちょっと相談をさせていただきましたぁ」
姫乙の言葉に空気がほんの少し歪んだような気がした。露骨に辺りをキョロキョロとする者はいなかったが、なんだかクラス全体が互いに互いを警戒しているような空気。認めたくはないが、疑心暗鬼の雰囲気が漂っていた。それは、分かっていながらも誰もが触れなかった部分。まだ、このクラスには特権を与えられたアベンジャーが混じっているという事実が根底にある。
「相談の結果、アベンジャーも応じてくれましたぁ。すなわちぃ【糾弾ホームルーム】内にて【レクリエーション】を行うことをねぇ。やはり、パターンをぶち壊していかねばならないのですぅ。まずはぁ、その幻想をぶち殺さねばならないのですぅ」
まだ飲み込めない。残念ながら、まだ姫乙が何を言いたいのか飲み込めない。彼の言い分から察するに、とあるアベンジャーと相談して【糾弾ホームルーム】で【レクリエーション】を行うことになったというだけのようだが。
「さてぇ、いまだに状況を飲み込めていない方が多いみたいですねぇ――。つまり現状はどういうことになっているのかぁ、説明してあげられる方はいますかぁ?」
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