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それぞれの週末【1】
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きっと、どこの家でも同じようなやり取りが行われているのだろう。けれども、答えはきっと同じところに収束する。国に対して――大日本帝国に逆らうことは愚かなことであり、従うしかないという答えにだ。なんだかんだで選択肢なんてない。だからこそ、こうして一時的ではあるが帰宅が許されたのであろう。
ずっと、リビングの外で聞き耳を立てていたのだろうか。不自然なタイミングでリビングに入って来た母は、妙に明るい様子で口を開いた。
「か、奏多。今夜は何食べたい? 今からお母さん、買い物に出てくるから」
小さく溜め息を漏らしたところを見ると、父はまだ納得していないのであろう。しかし、この貴重な時間を――息子が帰って来ている時間を喧嘩などで台無しにしたくない。そんな想いが溜め息に垣間見えた気がした。母もまた、せめてもと安藤の好きなものを夕食に作ってくれるのだろう。その気持ちだけは無下すべきではない。安藤は無理矢理に笑みを浮かべた。
「肉じゃがと――カレーかな。後、豚汁も」
夫婦揃って無理をしているのであろう。それでも父が「おいおい、凄い組み合わせだなぁ」と言い、母と顔を見合わせて笑う。もちろん安藤も無理をしていたが、しかし家族との時間は大切にしたいと思った。
「それじゃあ、食材を買ってくるから――。奏多は少し休みなさい。ご飯ができたら起こしてあげるから」
母に言われて、ようやく瞼が重たいことに気付いた。さっき、コーヒーを欲したのは、眠ってしまうと限られている時間が短くなると思ったからなのかもしれない。でも――充実した時間を過ごすには、どうやら少しばかり充電をする必要があるらしい。安藤は頷いた。
「うん、そうするよ。シャワーを浴びて少し寝るね」
そう断りを入れると、風呂場へと向かった安藤であるが、決して聞き逃さなかった。気丈に振る舞っていた母が、最後の最後に嗚咽を漏らしたのを――。でも、気のせいということにして自分をごまかした。
シャワーを浴び、部屋着に着替えて自分の部屋に向かう。ベッドに倒れ込むと、まだ外が明るいというのに、そのまま沈み込むような眠りに落ちていく。自分が思っていた以上に疲れていたのだろう。
あぁ、せめてカーテンくらいは閉めなければ。外の明かりが入って眩しいから、せめてカーテンだけでも――。そんなことを考えながらも、ゆっくりと安藤は眠りへと沈んでいったのであった。ふんわりと漂うカレーの匂いが、自分のことを起こしてくれるまで。
【Go to next homeroom】
ずっと、リビングの外で聞き耳を立てていたのだろうか。不自然なタイミングでリビングに入って来た母は、妙に明るい様子で口を開いた。
「か、奏多。今夜は何食べたい? 今からお母さん、買い物に出てくるから」
小さく溜め息を漏らしたところを見ると、父はまだ納得していないのであろう。しかし、この貴重な時間を――息子が帰って来ている時間を喧嘩などで台無しにしたくない。そんな想いが溜め息に垣間見えた気がした。母もまた、せめてもと安藤の好きなものを夕食に作ってくれるのだろう。その気持ちだけは無下すべきではない。安藤は無理矢理に笑みを浮かべた。
「肉じゃがと――カレーかな。後、豚汁も」
夫婦揃って無理をしているのであろう。それでも父が「おいおい、凄い組み合わせだなぁ」と言い、母と顔を見合わせて笑う。もちろん安藤も無理をしていたが、しかし家族との時間は大切にしたいと思った。
「それじゃあ、食材を買ってくるから――。奏多は少し休みなさい。ご飯ができたら起こしてあげるから」
母に言われて、ようやく瞼が重たいことに気付いた。さっき、コーヒーを欲したのは、眠ってしまうと限られている時間が短くなると思ったからなのかもしれない。でも――充実した時間を過ごすには、どうやら少しばかり充電をする必要があるらしい。安藤は頷いた。
「うん、そうするよ。シャワーを浴びて少し寝るね」
そう断りを入れると、風呂場へと向かった安藤であるが、決して聞き逃さなかった。気丈に振る舞っていた母が、最後の最後に嗚咽を漏らしたのを――。でも、気のせいということにして自分をごまかした。
シャワーを浴び、部屋着に着替えて自分の部屋に向かう。ベッドに倒れ込むと、まだ外が明るいというのに、そのまま沈み込むような眠りに落ちていく。自分が思っていた以上に疲れていたのだろう。
あぁ、せめてカーテンくらいは閉めなければ。外の明かりが入って眩しいから、せめてカーテンだけでも――。そんなことを考えながらも、ゆっくりと安藤は眠りへと沈んでいったのであった。ふんわりと漂うカレーの匂いが、自分のことを起こしてくれるまで。
【Go to next homeroom】
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