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#1 毒殺における最低限の憶測【エピローグ】
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――貴殿が不登校であることは最大限配慮いたします。
登校日だけではなく、登校時間まで指定されていた。それは、普段の始業時間よりかなり遅い時間。その時間に、自分のクラスではなく教員室に来いとのこと。もちろん、配慮だなんだとか言っておきながら、反逆罪という3文字のオマケつきだった。
郷野は両親に相談した。息子が不登校であることを気に病んでいたであろう両親は、その得体の知れない――ある種の出頭命令のようなものをきっかけに、息子が学校に通うようになるのではないかと期待を抱いたのかもしれない。二つ返事で学校に行って来いとのことだった。両親に相談したところで、学校に行かなければ反逆罪なのだから、郷野に選択肢などなかった。でも、もしかしたら心のどこかにいやな予感があって、だから両親に止めて欲しかったのかもしれない。
かつて大日本帝国が戦争をした際、国民を徴兵する時に赤紙というものを送りつけたらしい。赤紙は出兵を意味し、そして出兵は危険な戦地に送り出されることを意味し、なかば死を意味する。だから、郷野が受け取った国からの通知は、逆らうことができない赤紙であって、出がけの際に母親が郷野にかけた「いってらっしゃい、気をつけて」の声は、徴兵される家族を万歳三唱で送り出すのと同等だったのかもしれない。今、この映像を観ているであろう両親は、何を思っているのだろうか。
郷野が学校にたどり着いたのは、お昼前の授業――4時限目の終わり間際だった。教員室に向かうと、なぜか誰もおらず、代わりに坊ちゃん刈りの男が郷野を出迎えた。授業中とはいえ、教師が1人もいない教員室というのは不気味だった。
坊ちゃん刈りの男は姫乙といった。姫乙はクリーニングから返ってきたばかりですと言わんばかりの、綺麗に折りたたまれ、丁寧にビニールで包装された衣服を手渡してきた。
――じきに、この学校から諸君らのクラスの人間以外いなくなる。とりあえず、それに着替えて隣のクラスで待っていて欲しい。
姫乙は国の関係者らしいが、簡単な指示と一緒に、とりあえず郷野に着替えるように促してくるだけだった。応接室のパーテーションに隠れて着替えてみると、その格好はまるで兵隊のようだった。国から受け取った通知が赤紙だというのは、あながち間違っていなかったのかもしれない。
続いて姫乙から目出し帽をかぶるように指示され、そしてヘルメットまで頭にかぶる。挙げ句の果てに小銃なんてものを持たされた。ずっしりと重たくて、まるで本物の兵隊のようだった。
登校日だけではなく、登校時間まで指定されていた。それは、普段の始業時間よりかなり遅い時間。その時間に、自分のクラスではなく教員室に来いとのこと。もちろん、配慮だなんだとか言っておきながら、反逆罪という3文字のオマケつきだった。
郷野は両親に相談した。息子が不登校であることを気に病んでいたであろう両親は、その得体の知れない――ある種の出頭命令のようなものをきっかけに、息子が学校に通うようになるのではないかと期待を抱いたのかもしれない。二つ返事で学校に行って来いとのことだった。両親に相談したところで、学校に行かなければ反逆罪なのだから、郷野に選択肢などなかった。でも、もしかしたら心のどこかにいやな予感があって、だから両親に止めて欲しかったのかもしれない。
かつて大日本帝国が戦争をした際、国民を徴兵する時に赤紙というものを送りつけたらしい。赤紙は出兵を意味し、そして出兵は危険な戦地に送り出されることを意味し、なかば死を意味する。だから、郷野が受け取った国からの通知は、逆らうことができない赤紙であって、出がけの際に母親が郷野にかけた「いってらっしゃい、気をつけて」の声は、徴兵される家族を万歳三唱で送り出すのと同等だったのかもしれない。今、この映像を観ているであろう両親は、何を思っているのだろうか。
郷野が学校にたどり着いたのは、お昼前の授業――4時限目の終わり間際だった。教員室に向かうと、なぜか誰もおらず、代わりに坊ちゃん刈りの男が郷野を出迎えた。授業中とはいえ、教師が1人もいない教員室というのは不気味だった。
坊ちゃん刈りの男は姫乙といった。姫乙はクリーニングから返ってきたばかりですと言わんばかりの、綺麗に折りたたまれ、丁寧にビニールで包装された衣服を手渡してきた。
――じきに、この学校から諸君らのクラスの人間以外いなくなる。とりあえず、それに着替えて隣のクラスで待っていて欲しい。
姫乙は国の関係者らしいが、簡単な指示と一緒に、とりあえず郷野に着替えるように促してくるだけだった。応接室のパーテーションに隠れて着替えてみると、その格好はまるで兵隊のようだった。国から受け取った通知が赤紙だというのは、あながち間違っていなかったのかもしれない。
続いて姫乙から目出し帽をかぶるように指示され、そしてヘルメットまで頭にかぶる。挙げ句の果てに小銃なんてものを持たされた。ずっしりと重たくて、まるで本物の兵隊のようだった。
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