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#1 毒殺における最低限の憶測【糾弾ホームルーム篇】

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 あくまでも伊勢崎は自分の考えを変えない。副委員長が犯人だと信じて疑わないようだ。確かに、状況的に考えれば副委員長が疑われても仕方がない。しかし、実はもう1人いるのだ。副委員長よりも怪しく、そして犯人である可能性の高い人物が。

「伊勢崎君、今よりも視野を広げて考えるの。そうすると、これまでの流れのなかにあった違和感に気づくはず。その違和感の正体こそが真相よ」

 芽衣が静かに言い放つと、伊勢崎は首を傾げつつ、しかし素直に記憶を辿っているようだった。

「で、犯人は誰なの? その辺りの一部だけで分かったみたいになってないでさ、ちゃんと真綾達にもわかるように説明してよ」

 本田と同じように、とりあえず答えを求めるだけなのは真綾である。しかし、友華を犯人だと決めつけているわけではないようだし、その辺はありがたかった。

「そもそも、大槻さんと昼安藤の見解が同じだとも限らないよな? 1人ずつ話を聞いていると時間が足りなくなるような気もするから、急いだほうがいいかも」

 制限時間のことをシビアに見ているのだろう。坂崎が呟き、そしてチョークが折れてしまわんばかりの勢いで根津が黒板に文字を殴り書きにした。

 ――犯人は誰?

 それは実にシンプルであり、安藤達が求めねばならないただひとつのものだった。

「御託はいらん。誰が犯人なのか分かればいいし、みんながそれに納得するだけで構わん。安藤、大槻――どちらからでも良いから、考えを話してみてくれ」
 
 根津の言葉に頷きつつも、しばらく考えた後に手を挙げて立ち上がる芽衣。もはや進行役の小宮山など必要ないのかもしれない。

「残された時間は少ないわ。だから、これから安藤君と私で一斉に犯人だと思う人物を指差そうと思う。それが合致すれば――つまり、私と安藤君の答えが同じなら、みんなが納得する材料にもなるだろうから」

 実に勝手な提案であり、当然ながら安藤への事前の打診もない。いきなり指名をされ戸惑う安藤に「安藤君、立って……」と容赦ない芽衣。観念して立ち上がった。

「せーので指差しましょう。7人のクラスメイトを毒殺した犯人。それは――」

 これで芽衣と答えが異なっていたらどうしよう。不安で仕方がなかったが、ここまできてしまったら仕方がない。安藤は覚悟を決める。それを見計らったかのように芽衣が「せーの」と音頭を取り、そして安藤と芽衣は一斉に犯人を指差した。
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