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#1 毒殺における最低限の憶測【糾弾ホームルーム篇】
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伊勢崎の意見は、裏の裏の裏を読んだ――というか、それを言ってはキリがないというようなものだった。けれども、全く無視できるものでもなかった。なによりも、伊勢崎の推測が正しければ、犯人がわざわざ不利な仕様にしたことにも説明がついてしまう。
友華は唯一牛乳に口をつけなかったことで、犯人だと疑われてしまった。なぜ、犯人だと疑われてしまったかは言うまでもない。牛乳に毒が混入されているのをあらかじめ知っており、自分が毒を飲んでしまうことを恐れたと推測できるからだ。しかし、友華が牛乳に口をつけなかった理由は他にあった。乳製品アレルギーだったからである。このような展開になることで、友華にかけられた疑いが晴れることになるのだ。それこそが友華の狙いであると伊勢崎は言いたいのである。その証拠に伊勢崎のオンステージは続いた。
「そもそも、副委員長が犯人ならば、自分が飲めない牛乳を飲み物に指定するのも不自然――なんて擁護意見も狙えるよね? 犯人は牛乳に毒が混入されていることを知っていた。だから牛乳に口をつけないこと自体が、後になって疑われることになるのも分かっていたはず。だったら、わざわざ自分が飲めない牛乳を飲み物として指定するよりも、他の飲み物……例えば、お茶とか、水とかに混入させたほうがいいに決まっている」
いつもの軽いノリでありながらも、しかし確実に友華を追い詰めていくロジカルな展開法。彼のファンは確実に増えたことであろう。そして、カメラの向こう側のファンの期待に応えてかは分からないが、饒舌に友華へと畳み掛ける。
「でも、毒は牛乳に混入されていた。犯人がそう指定したんだ。そして、少なくとも乳製品アレルギーである副委員長が、疑われることが分かっているのに牛乳を飲み物に指定するわけがない――つまり、副委員長は犯人ではないという図式ができあがる。ほら、ここまでみんなの意見を誘導できれば、もう副委員長が疑われることはない。わざと自分を疑わせ、その疑いを晴らして貰うことにより、疑いの目をそらす。それを実現するために、犯人はわざわざ自分にとって不利になるような仕様を望んだんだよ」
伊勢崎はそこで髪の毛をかきあげると「どうかな? 副委員長――」と、流し目を決めてみせる。もし友華が本当に犯人であれば、伊勢崎の発言は致命的だ。当の本人は根津に差し出された手を握ったまま、立ち上がりはせずにキョトンとしていた。
友華は唯一牛乳に口をつけなかったことで、犯人だと疑われてしまった。なぜ、犯人だと疑われてしまったかは言うまでもない。牛乳に毒が混入されているのをあらかじめ知っており、自分が毒を飲んでしまうことを恐れたと推測できるからだ。しかし、友華が牛乳に口をつけなかった理由は他にあった。乳製品アレルギーだったからである。このような展開になることで、友華にかけられた疑いが晴れることになるのだ。それこそが友華の狙いであると伊勢崎は言いたいのである。その証拠に伊勢崎のオンステージは続いた。
「そもそも、副委員長が犯人ならば、自分が飲めない牛乳を飲み物に指定するのも不自然――なんて擁護意見も狙えるよね? 犯人は牛乳に毒が混入されていることを知っていた。だから牛乳に口をつけないこと自体が、後になって疑われることになるのも分かっていたはず。だったら、わざわざ自分が飲めない牛乳を飲み物として指定するよりも、他の飲み物……例えば、お茶とか、水とかに混入させたほうがいいに決まっている」
いつもの軽いノリでありながらも、しかし確実に友華を追い詰めていくロジカルな展開法。彼のファンは確実に増えたことであろう。そして、カメラの向こう側のファンの期待に応えてかは分からないが、饒舌に友華へと畳み掛ける。
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