糾弾ホームルーム！ ―ぼくたち、わたしたちの主張―

＃1 毒殺における最低限の憶測【糾弾ホームルーム篇】

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「犯人は牛乳パックの中に毒が入っていたことを知っていた。だから犯人は自分に配られた牛乳パックに手をつけることができなかった。毒を飲まずに済む方法は簡単。牛乳を飲まなければいいだけだし」

　ドスの効いた低い声で友華に問う真綾。スクールカースト上位中の上位であり、またヤンキーの本田の彼女でもある真綾から、高圧的に物事を言われてしまえば、誰だって言葉を失ってしまうことになるだろう。友華は黙ったまま答えようとしない。ただ下を向いているばかり。

「答えなよ！　どうして牛乳を飲まなかったの？　あの時、誰もが喉乾いてたよねぇ？　配られた牛乳を飲まない理由なんてなかったよねぇ？　それなのに、どうして牛乳に手をつけなかったの？　言いたくなければ、真綾が答えを言ってあげるよ」

　何も答えようとしない友華の態度に苛立ったのであろう。さらに追い詰めるかのごとく、言葉を並び立てる真綾。安藤は残っていた資料をめくった。友華だけが牛乳に口をつけていないとは限らないのだから、その事実確認をしておくべきだった。けれども、封が切られていないことを確認できたのは、友華の写真だけだった。それ以外の写真では、どれも牛乳パックの封が切られている。例外があるとすれば、そもそも牛乳パックすら置かれていない、真っさらな机の上を写した写真があったことくらいか。ずっと学校に来ていない郷野の机だった。

「副委員長は、毒が牛乳パックの中にランダムで入っていることを知っていた。だから、牛乳に口をつけなかった。つーまーりー、副委員長が犯人ってわけ」

　友華のことを小馬鹿にするかのように、改めて指差す真綾。クラスでの発言力が強い真綾の推測は、クラスを納得させるには充分だったようだ。

「あー、そうかもしれねぇ。っていうか、そうとしか考えられねぇな。副委員長を除く全員が牛乳に口をつけてるわけだしよ」

　真綾に続くは本田であり、スクールカースト上位者による、精神的な吊るし上げが続く。ただ――本当に副委員長が犯人なのだろうか。確かに、あの状況で牛乳に口をつけないというのは不自然だ。喉の渇きに個人差はあれども、個人面談の間ずっと待たされておいて、全然喉が渇かないなんてことはないだろう。牛乳を差し出されたら、無意識にストローを刺す程度には喉が渇いていたはずだ。