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#1 毒殺における最低限の憶測【糾弾ホームルーム篇】

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 安藤の発言が拾い上げられる前に、真綾が声を上げてしまった。小宮山がどうしようかと迷ったような仕草を見せたが、しかし昼安藤と呼ばれる地味なカースト底辺者よりも、カースト上位でギャルグループのボスである真綾のほうが発言力は強い。

「あ、真下さん、どうぞ――」

 安藤の言葉はなかったことにされ、発言権は真綾に奪われてしまった。もっとも、安藤に発言権など、そもそも生じてすらいなかったのかもしれない。まぁ、こういうのは慣れっこだし、いちいち落ち込んではいられない。今はホームルームに集中すべきだ。

「あのさぁ、犯人は毒がどの牛乳パックに入っていたのか知らなかったわけじゃん? だったら、牛乳を飲まなきゃいいんじゃね――って机の上を写した写真を見てたらさ、たった一人だけいたんだよねぇ。牛乳に手を付けていないやつがさ」

 普段から頭が悪そうな言葉遣いをするし、実際にテストの順位なども低かったはずであるが、安藤が思いも寄らなかった部分に真綾が目をつけたことに驚いた。最初から事件には関係がないだろうと切り離して考えていた、机の上の写真集だが、どうやら重要な手がかりだったようだ。事件が発生した当時の、それぞれの机の上を撮影した写真。それが予期せぬ方向からのアプローチとなるなんて。

「ねぇ、副委員長――。どうしてあんた、牛乳飲まなかったの?」

 わざわざ立ち上がり、そして真綾が指を差した人物。それは教壇に上がり、書記に徹していた副委員長こと友華だった。教室中に、慌ただしく資料をめくる音だけが響く。とりあえず友華の机の上を撮影した写真のページを開くと、安藤はそれを観察する。確かに、ストローはパックにくっついたままだし、飲み口の銀紙に穴が空いている様子も見られない。誰が見ても、牛乳パックの封が切られていないことは明らかだった。

「え? それは――」

 友華は明らかに困惑したかのような表情を浮かべ、言葉を失ってしまう。安藤は友華の様子を伺いつつも、他にも同じように、牛乳に口をつけていないクラスメイトがいないかを調べた。そこで、写真の被写体が牛乳パックだったということに気づく。どれも机の上を撮影した写真なのであるが、写真の中央には必ず牛乳パックが写っている。しかもわざわざ、それが封の切られたものなのか判別できるように撮影されていたのだ。どうやら、机の上を撮影した写真は、その事実を確認するために多くのページ数を割いて資料に組み込まれたらしい。
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