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#1 毒殺における最低限の憶測【糾弾ホームルーム篇】

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「さてぇ、ざっと目を通していただけましたでしょうかぁ? そろそろ本題中の本題であるぅ【糾弾ホームルーム】を始めたいのですがぁ」

 体感時間にして5分から10分くらいだったろうか。机の上の写真は流し読みする程度に目を通したくらいだが、それでも資料をすべて一読することはできた。そもそも材料が足りないし、これでアベンジャーの正体に迫れとは無理な話のような気がしてならないが。

「ちょっとだけいいかい?」

 そこで口を開いたのは、このクラスのなかでも一番のイケメンというやつで、それでいながら文武両道。安藤がどう逆立ちしたって勝てない男――伊勢崎中いせざきあたるだった。彼にいたっては学校内にファンクラブがあるくらい人気がある。しかしながら、特定の誰かと付き合っているという噂は聞いたことがなかった。もはやアイドルみたいなものなのだろう。

「なんでしょうかぁ? 正直なところぉ、世の中のイケメンは全員死ねと思っている姫乙にぃ、ろくな苦労も知らずにイケメンというだけで様々な特典付きの人生を歩んできた伊勢崎君がぁ、一体何のご用件でしょうかぁ?」

 姫乙の妬み全開の言葉。それを軽く鼻で笑い飛ばすと、伊勢崎は口を開く。

「この資料なんだけどさ――こんなもんで本当にアベンジャーのことが分かるようになっているの?」

 女性かと思うほどの、ほっそりとした体格に、これまた女性がうらやむほどのサラサラの髪。鼻筋が通っており、目はしっかりとした二重。どこか両性的に見えるものまた、人気の要因なのかもしれない。いちいち姫乙の妬みを相手にしない辺りは、きっと彼なりの処世術なのであろう。質問の内容は的確で、安藤の思っていることを代弁してくれた。

「もちろん、これだけの情報があればぁ、アベンジャーにはたどり着けますよぉ。後はぁ、諸君らがどのように議論を進めぇ、どのような結論を出すかですぅ」

 姫乙はそう言うと、懐中時計を取り出す。

「さて、いい加減始めましょう。くどいようですが制限時間は1時間。やり方は諸君らの自由ですぅ。それではぁ、テレビ局の方々もよろしいですか? お茶の間のみなさんもよろしいですか? いよいよ始まる【糾弾ホームルーム】はCM――」

「ですから、CMには入りませーん!」

 とっさに声を上げたテレビクルーの男は、きっとディレクターとかの類いなのであろう。姫乙は肩透かしを食らったようなリアクションをするが、すぐに立ち直って続ける。
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