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#1 毒殺における最低限の憶測【復讐篇】

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 姫乙はそこで教室を見回すと、気味の悪い笑みを漏らす。

「男子諸君の考えていることが手に取るように分かってしまうねぇ。夜の学校に女子とお泊まり会――そりゃぁ、なにかあるんじゃないかって思いますよねぇ。しかしぃ、学校で生活するのは、あくまでも【糾弾ホームルーム】に備えてであってぇ、男子と女子がイチャイチャするためではないのですぅ。その辺りを履き違えないようにぃ。いいですかぁ? ハロウィンは収穫祭であってぇ、ろくになにも収穫もしてない都会の連中がぁ、イベントに便乗して出会いを求める場ではないのですぅ。クリスマスだってぇ、キリストの誕生だか命日だかを祝う日に過ぎないのですぅぅ」

 なんというか、色々な意味で姫乙の独壇場だった。話が脱線することも多いのだが、姫乙が一人でベラベラと喋る時間だけが延々と続いた。

「それはそうと、文化祭とか体育祭って、やっぱり準備のために夜遅くまで残って作業したりするせいか、大抵イベントが終わるとクラスで何組かカップルができてるよねぇ。しかしぃ、それは高校生活におけるイベントに酔っているだけでぇ、大抵はクリスマスが終わると別れてたりしますよねぇ。まぁ、やることはやってるんでしょうけどぉぉ」

 姫乙の蛇足満載のQ&Aは続き、気が付くと時計は午後6時半を回っていた。そして、事態が動いたのは、安藤が時間を確認したのとほぼ同時であった。

「ちょっと――いいですか?」

 手を挙げて、静かな口調で意見したのは、恐らくクラスでも立ち位置がいまいち良く分からない存在――大槻芽衣おおつきめいだった。肩まで伸びた黒髪は、前髪が綺麗に切り揃えられており、それに端正な顔立ちが相まって、まるで日本人形のようである。ごくごく普通に振舞っていれば、きっとクラスでも上位のカーストに入れていたことであろう。しかしながら彼女……自らクラスメイトをシャットダウンしている節がある。人と関わるのが面倒なのか、それとも孤独を好むのか。誰とも仲良くしようとせず、また群れようともせずに、教室の隅で本を読んでいる印象がある。安藤自身が本の虫であり、やはり教室の隅で本を読むことが多いから、彼女に対して妙な親近感は覚えていた。

「はいぃ、構いませんよぉ。なんでしょうかぁ?」

「もう、下校時刻――。部活動をやっている生徒でも午後6時半になるまでに帰らねばならない決まりがある。なら、私達を拘束できる時間も過ぎているはずよ。だったら、もう今日は帰らせて欲しい」
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