糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

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#1 毒殺における最低限の憶測【復讐篇】

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 何が起きたのか分からないが、男が支離滅裂なことを言っていることは確実だった。もしかすると不審者かもしれない。そんなことを思いつつも、しかし異様な雰囲気に口を開けずにいる安藤を尻目に、教室の一角から声が上がった。

「はい! 質問がある!」

 教室全体を揺るがすかのような声を上げたのは、超体育会系でスポーツ万能の熱血漢。根津善ねづぜんであった。このクラスにはカーストによってある程度の壁があるのだが、彼ばかりはカーストの壁など気にせずに、誰とも対等に接してくれる。彼のことを悪く思う人間は、きっとクラスにはいないだろう。それだけ信頼が厚く、情深い男だった。

「なんでしょうかぁ?」

 姫乙は首を傾げただけのつもりなのだろうが、なんてことない仕草こそが不気味に見えた。

「隣の教室では授業を行っておる。個別面談などできる状態ではないはずだ」

 根津の言葉に、なぜだか姫乙は笑みを浮かべた。まるで、それを問われるのを待っていたかのように。

「隣の教室では授業など行われない。他の学年、他のクラスの生徒はもちろん、ここの教師の方々をはじめとする学校関係者にも、これから帰宅していただくからねぇ。つーまーりー、この学校に残るのは2年4組の諸君らだけなのだよぉ。つい先ほど、この学校は大日本帝国政府の支配下に置かれたのだよぉ。そして、誰も政府には逆らえない。逆らえば反逆罪だからねぇ」

 姫乙がそう言っている間に、廊下の辺りが騒がしくなる。挙げ句の果てには、校内放送で早急な帰宅が促された。大日本帝国において、政府は絶対的な存在。下手なことをすれば反逆罪に問われてしまうだろうから、先生方も必死なのだろう。

 学校が静かになるのには、そこまで時間がかからなかった。その頃合いを見計らっていたのか、姫乙はポケットから金色の何かを取り出した。どうやら懐中時計のようだ。時間を確認した後に懐中時計をポケットに戻し、その代わりに手帳を取り出した。

「ではぁ、これより個別に面談を行いまぁす。そこで法案の詳細及び、一部の方には大事なお話をさせていただく予定になっていますぅ。出席番号順に面談を行いますので、最初は安藤奏多君――ですねぇ」

 姫乙は手帳をめくりながら呟いた。得てして出席番号1番というものは損するポジションである。もちろん、得をすることだってあるのだが、何が何だか分かっていない状況で、個人面談の1発目というのは嫌だった。
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