糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

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#4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】

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 真綾からコンパクトミラーを借りる。正方形で鏡面を保護するカバーがついているものだった。

「後もうひとつ、コンパクトミラーがあると助かるんだけど――」

 ひとつのコンパクトミラーだけでも説明できないことはない。事実、鏡が一枚だけでも、安藤のたどり着いたトリックは成立するだろう。けれども、香純の一件に関しては、二枚の鏡が使われたと考えるべきだ。

「なら、俺のを使えよ」

 てっきり他の女子から声が上がるものだとばかり思っていたが、意外なことに声を上げたのは本田だった。男だって身なりに気を遣うべきなのだろうが、彼がコンパクトミラーを持ち歩いているのが、どうにもイメージと合わなかった。

 本田からコンパクトミラーを受け取って納得。真綾のコンパクトミラーと色違いなだけで、形状は全く同である。恐らく、お揃い――古い言い方ならばペアルックというやつで、使用することはないが本田はなんとなく持ち歩くということをしていたのであろう。正方形のコンパクトミラーがふたつ。しかも、カバーは鏡の背中側に収納できるタイプ。まるで、この時ために存在する鏡であるかのようだ。

「それじゃ、これを見て欲しいんだ」

 安藤はそう言うと、自分の机の上に鏡を立てる。上から見た形だと、三角形の上辺のみ――もしくは【ハ】の字の上がくっついたような形にする。ふたつのコンパクトミラーがあれば、簡単に作れる形であろう。そして、コンパクトミラーのかげに消しゴムを置いた。コンパクトミラーの鏡面がクラスメイトのほうを向いているような格好になる。

「さて、ここから消しゴムが見える人はいる?」

 答えの分かりきったことを聞いてやる。あまりにも当然で、答えることさえ馬鹿馬鹿しくなるようなものをあえてだ。

「見えるわけがねぇだろ。鏡で消しゴムが隠されてるんだからよ」

 本田が鼻で笑いながら答えてくれた。クラスメイトに鏡面が向くようにふたつのコンパクトミラーを並べ、そのかげに消しゴムを置いたのだから見えるわけがない。しかも、安藤側から消しゴムが見えるような形になっているのだから、安藤の背後に回り込みでもしなければ、消しゴムの姿は拝めないであろう。

「その通り。そして、これと全く同じ原理で、越井さんは首から下を消したんだよ。そうだよね? 越井さん――いいや、大槻さんに聞いたほうがいい?」

 安藤はどちらに問うでもなく言葉を放り、それを芽衣のほうが受け止める。このやり取りは、いつも通りの連携のリズムだった。
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