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#4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】
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芽衣による一方的な独白が続くなか、珍しく申し訳なさそうに手を挙げる真綾。ちらちらと香純のほうに視線をやりつつ口を挟む。
「あ、あのさ――。真綾達が見た映像に映っていた香純って、首から下がなかったよね? それなのに香純はこうして生きてる。ゆ、幽霊とかじゃないんだよね?」
真綾の怖がり方からして、彼女の弱点が見えたようだ。もっとも、だからどうこうというわけではないが、しっかりと女の子らしいところがあるのだなと思った。
「もちろん、越井さんは幽霊でもなんでもないわ。もちろん、首から下がない――なんてことにもなっていない。あの演出をしたのは、一瞬で彼女が確実に死んでいると、みんなに誤認してもらうため。星野崎君の時みたいに自殺の可能性が浮かび上がってしまうと、議論が変な方向にずれてしまって、私の望まない答えが出されてしまうかもしれない。確実に私の思い通りの答えを出してもらうためには、自殺の可能性を排除しておきたかったの」
自殺の可能性を排除するため――。安藤はずっと引っかかりを覚えていた。なぜ、犯人はわざわざ首を切り落とすという手間がかかることをやったのか。それは、確実に香純が自殺ではないと示すためだったのだ。今となっては、はっきりと確信できていた。そして、芽衣は答えにたどり着くためのヒントを、しっかりと現場に残していたのである。香純の生首が映った映像は事前に撮影したものであるが、恐らくは安藤達の気づきのきっかけとして、あえて同じものを現場に残してくれたのであろう。
「でも、あれはどう見ても生首にしか見えなかったけど――」
小宮山もまた、香純の顔を見ながら口を開く。彼女は正真正銘の越井香純であって、幽霊でも偽物でもない。あの生首は香純本人ではあるが、しかし当然ながら首など切断されていなかったのだ。
「古典的なマジックのネタが使われていたんだと思う。その証拠が資料にもしっかりと映ってるんだ」
爆破された後の視聴覚室。資料を手に取ると、そのページを開いて写真を指差す安藤。実はこの写真には不自然な点があった。
「注目して欲しいのは、写真のごくごく一部。何かに光が反射している部分だ」
爆破された後の視聴覚室の写真には、反射した光が映り込んでいる。それこそが、実は真相を解明するために必要な材料だなんて考えもしなかった。
「多分、割れた窓ガラスの破片じゃない?」
そこで口を挟むは小雪。やはり彼女とはうまい具合に噛み合ってくれない。そういう性質なのだと思う。
「あ、あのさ――。真綾達が見た映像に映っていた香純って、首から下がなかったよね? それなのに香純はこうして生きてる。ゆ、幽霊とかじゃないんだよね?」
真綾の怖がり方からして、彼女の弱点が見えたようだ。もっとも、だからどうこうというわけではないが、しっかりと女の子らしいところがあるのだなと思った。
「もちろん、越井さんは幽霊でもなんでもないわ。もちろん、首から下がない――なんてことにもなっていない。あの演出をしたのは、一瞬で彼女が確実に死んでいると、みんなに誤認してもらうため。星野崎君の時みたいに自殺の可能性が浮かび上がってしまうと、議論が変な方向にずれてしまって、私の望まない答えが出されてしまうかもしれない。確実に私の思い通りの答えを出してもらうためには、自殺の可能性を排除しておきたかったの」
自殺の可能性を排除するため――。安藤はずっと引っかかりを覚えていた。なぜ、犯人はわざわざ首を切り落とすという手間がかかることをやったのか。それは、確実に香純が自殺ではないと示すためだったのだ。今となっては、はっきりと確信できていた。そして、芽衣は答えにたどり着くためのヒントを、しっかりと現場に残していたのである。香純の生首が映った映像は事前に撮影したものであるが、恐らくは安藤達の気づきのきっかけとして、あえて同じものを現場に残してくれたのであろう。
「でも、あれはどう見ても生首にしか見えなかったけど――」
小宮山もまた、香純の顔を見ながら口を開く。彼女は正真正銘の越井香純であって、幽霊でも偽物でもない。あの生首は香純本人ではあるが、しかし当然ながら首など切断されていなかったのだ。
「古典的なマジックのネタが使われていたんだと思う。その証拠が資料にもしっかりと映ってるんだ」
爆破された後の視聴覚室。資料を手に取ると、そのページを開いて写真を指差す安藤。実はこの写真には不自然な点があった。
「注目して欲しいのは、写真のごくごく一部。何かに光が反射している部分だ」
爆破された後の視聴覚室の写真には、反射した光が映り込んでいる。それこそが、実は真相を解明するために必要な材料だなんて考えもしなかった。
「多分、割れた窓ガラスの破片じゃない?」
そこで口を挟むは小雪。やはり彼女とはうまい具合に噛み合ってくれない。そういう性質なのだと思う。
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