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#4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】

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 その事実は安藤も知らないことだった。言葉の意味合いから察するに、どうやらあらかじめ香純はスパイとして姫乙に近づいたようだ。

「やり方は越井さんにお任せしたし、どんな手段を使ったのかはあえて聞かない。それは私達が知る必要のないことだし、今回の事件には関係ないから」

 香純をあらかじめ姫乙の元へと送り込んでいたなんて――芽衣は一言も言わなかったし、張本人である香純と芽衣以外は、誰も知らなかったであろう。

「違う、最初は大槻さんが姫乙に近づこうと――」

「それは事件には関係ないことよ。私が越井さんに無理なお願いをして、それをなんとか越井さんが受け入れてくれた。危険な目に遭うリスクもあったのに、無理を言ったのは私なの」

 香純の言葉をさえぎる芽衣。芽衣と香純の間にどんなやりとりがあったのかは分からない。けれども、色々とすったもんだがあって、香純が姫乙の元に潜り込んだのであろう。確か、裏切り者の話が出たのが星野崎の事件の時だから、少なくともそれより前から、芽衣は姫乙のところに毒を忍ばせていたことになる。

「姫乙の元に潜り込んだ越井さんには、私達が裏でやっていることを逐一報告するようにお願いしていたわ。そこの本人は無表情で逃げようとしているし、さっきの私の揺さぶりにも動じなかった。でも実際のところ、私達が連絡を取り合えるように新しいスマートフォンを手に入れたことは知っていたはずよ」

 こちらが裏で動いていた情報は、香純によって姫乙に横流しされていたということか。それだけであれば、意図的に潜り込ませたとしても、文字通り香純は裏切り者なのではないだろうか。

「こうして、定期的に情報を流すことによって、越井さんには姫乙との間に信頼関係を築いてもらったの。こうすることで、姫乙は私達の動きを把握できているつもりになる。なにか怪しげな動きがあれば、必ず越井さんが情報を流してくれる――と思い込むようになる」

 香純を裏切り者として姫乙の元に送り込んだ意図が見えてきたような気がした。それは恐らく、ガードの固い姫乙に隙を生じさせるためだ。香純という手札があれば、不穏な動きを全て把握できると思い込ませ、実のところ大事な情報だけは流さないようにしていたと思われる。

「今回の私の動きは越井さんから聞いていなかったでしょ? それは当然のこと。情報をあえて流さないようにしておいたから。俗に言う木の葉を隠すなら森の中ってやつね。ただし、森の中だといっても、お目当ての木の葉があるとは限らないってことよ」
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