糾弾ホームルーム！ ―ぼくたち、わたしたちの主張―

＃4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】

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　スマートフォンは小雪の協賛により、全員に新しいものが与えられていた。そもそも、そうすることで学校内でスマートフォンが使えることに気づかせてくれたのはアンジョリーヌである。全面的に協力してくれたわけであるし、間違いなく彼女は安藤達にとってキーパーソンになるべくしてなったのだ。

「えぇ、もういいわ。隠れていなくても大丈夫よ」

　それだけ伝えると、さっさと電話を切ってしまう芽衣。何ひとつ口を開こうとしない姫乙に向かって笑みを浮かべる。

「いっそのこと妨害電波でもだして、どのスマートフォンでも学校では使えないってことにしておけば、こんなことにはならなかったかもね」

　姫乙は反応を全く見せない。無表情のまま、やや教室を見回すと、小さく溜め息を漏らす。まるで強がっているように見えるのは気のせいだろうか。

「悪いけど、あなたの知らないところで私達も色々と手を回させてもらったの」

　芽衣の言葉を待っていたかのごとく、勢い良く教室後ろ側の引き戸が開いた。そして入ってきたのは――二人の鑑識官だった。兵隊達が慌てて銃口を向けたのは、なかば反射反応だったのかもしれない。

　二人の鑑識官の片割れが、ガスマスクを勢いよく脱いだ。その下に現れた顔は――もちろん坂崎だった。

「いや、なんとか上手く行って良かったよ。ぶっつけ本番だったから、どのタイミングでガスマスクを手渡せばいいのか分からなかったし」

　ガスマスクのせいでこもってしまうのであろう。顔に汗をびっしょりとかいた坂崎が、安堵の溜め息らしきものを漏らした。

「あのタイミングでぴったりだったわ。おかげさまで誰も疑わなかった。鑑識官の中に坂崎君と――越井さんが混じっていることなんてね」

　もう一人の鑑識官がガスマスクを脱いだ。その下にあった顔は……死んだはずの越井香純のものだった。

「まさか――私を裏切ったのか？」

　そこでようやく姫乙が口を開いた。無表情のまま、抑揚のない声で問う。

「裏切ったわけじゃない。最初からあなたの味方でもなんでもなかったのよ。ここまで言えば聡明なあなたのこと。どういうことか分かるでしょ？」

　芽衣の言葉に誰よりも力強く頷いたのは香純だった。その目が見据える先の姫乙は、けれども無表情を崩さない。

「越井香純がクラスメイトを裏切ったこと自体がでっち上げだった……ということだろうか？」

　全く抑揚のない口調が不気味である。しかし、芽衣は構わずに追撃を仕掛ける。

「ご名答。越井さんが汚れ役を引き受けてくれたのよ。私の無理なお願いを受け入れてくれてね」