437 / 468
#4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】
31
しおりを挟む
安藤はクラスメイト達の顔をぐるりと見回す。そのまま視線を姫乙のほうへとやり、最後にアンジョリーヌと目を合わせた。
「――緊張の瞬間です。この瞬間を御覧になっている視聴者のみなさんこそが、きっと生き証人となられることでしょう」
アンジョリーヌはカメラに向かって大袈裟なことをのたまう。――いいや、考え方によっては、大袈裟でもなんでもないのかもしれない。安藤は小さく呼吸を置くと、予定していた通り芽衣のことを指差した。
「大槻さん、君だ――」
辺りの空気がしんと静まり、急に冷たくなったような気がした。カメラを通して全国へと、このたとえようのない空気が伝わっているだろうか。
「姫乙、さっさとやれよ。ジャッジメントとやらをな」
それを払拭するかのごとく、不敵な笑みを浮かべながら机の上に足を乗せるは本田。そこに彼女の真綾が加勢する。
「さすがにもったいぶる空気じゃないってことくらい――分かってるよね?」
誰もが答えを待ちわびている。果たして安藤の推測は正しいのか、それとも間違っているのか。自分を信じて打ち出した答えではあるが、このまま終わってしまうのではないかと考えたら背筋が冷たくなった。
「ではぁ、お言葉に甘えまして、姫乙ジャッジメントと洒落込みましょうかぁぁぁ。それではテレビの前の視聴者の方もご一緒に。姫乙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
やっている本人は恥ずかしくないのだろうか。恐らくは格好いい決めポーズのつもりなのだろうが、そのポーズを変える度にこちらのほうが恥ずかしくなる。
「ジャッジメントぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ただ、姫乙本人はノリノリであり、また恥ずかしがる素振りも見せない。まぁ、これで見納めになるであろうから、我慢して付き合ってやろうではないか。
「今回の事件の犯人。それは――大槻芽衣さんでしたぁぁぁぁ! 正解! 大正解! まさかぁ、これまで諸君らを引っ張ってきた芽衣ちゃんが犯人だなんてぇ。しかもぉ、アベンジャーとしての願いも切ないっ! 全員の解放を願い事とするなんて、なんて優しいのでしょうか? もっとも、それと同時に爆発も伴っていたので、なんとも儚い願いになってしまいましたがねぇぇぇ」
楽しげに一人で手を叩く姫乙。彼からすれば、また安藤達が犯人を暴き、次のステージへと挑むだけだと思っているのだろう。しかし残念。その先はない。
「みんな、今の姫乙の言葉――聞いたわね?」
うつむき気味だった芽衣が口を開くと、ゆっくりと立ち上がった。
「――緊張の瞬間です。この瞬間を御覧になっている視聴者のみなさんこそが、きっと生き証人となられることでしょう」
アンジョリーヌはカメラに向かって大袈裟なことをのたまう。――いいや、考え方によっては、大袈裟でもなんでもないのかもしれない。安藤は小さく呼吸を置くと、予定していた通り芽衣のことを指差した。
「大槻さん、君だ――」
辺りの空気がしんと静まり、急に冷たくなったような気がした。カメラを通して全国へと、このたとえようのない空気が伝わっているだろうか。
「姫乙、さっさとやれよ。ジャッジメントとやらをな」
それを払拭するかのごとく、不敵な笑みを浮かべながら机の上に足を乗せるは本田。そこに彼女の真綾が加勢する。
「さすがにもったいぶる空気じゃないってことくらい――分かってるよね?」
誰もが答えを待ちわびている。果たして安藤の推測は正しいのか、それとも間違っているのか。自分を信じて打ち出した答えではあるが、このまま終わってしまうのではないかと考えたら背筋が冷たくなった。
「ではぁ、お言葉に甘えまして、姫乙ジャッジメントと洒落込みましょうかぁぁぁ。それではテレビの前の視聴者の方もご一緒に。姫乙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
やっている本人は恥ずかしくないのだろうか。恐らくは格好いい決めポーズのつもりなのだろうが、そのポーズを変える度にこちらのほうが恥ずかしくなる。
「ジャッジメントぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ただ、姫乙本人はノリノリであり、また恥ずかしがる素振りも見せない。まぁ、これで見納めになるであろうから、我慢して付き合ってやろうではないか。
「今回の事件の犯人。それは――大槻芽衣さんでしたぁぁぁぁ! 正解! 大正解! まさかぁ、これまで諸君らを引っ張ってきた芽衣ちゃんが犯人だなんてぇ。しかもぉ、アベンジャーとしての願いも切ないっ! 全員の解放を願い事とするなんて、なんて優しいのでしょうか? もっとも、それと同時に爆発も伴っていたので、なんとも儚い願いになってしまいましたがねぇぇぇ」
楽しげに一人で手を叩く姫乙。彼からすれば、また安藤達が犯人を暴き、次のステージへと挑むだけだと思っているのだろう。しかし残念。その先はない。
「みんな、今の姫乙の言葉――聞いたわね?」
うつむき気味だった芽衣が口を開くと、ゆっくりと立ち上がった。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
完結【第7回ホラー・ミステリー小説大賞サスペンス応募作】宝石の行方
Mr.後困る
ミステリー
ルイ王国のラズ公爵家の令嬢リーゼはルイ王国王太子のマーカスと婚約破棄を行った。
マーカスの不貞が原因でリーゼの長年の妃教育を加味した慰謝料は
広大な領地、 莫大な賠償金、 リーゼの隣国マーズ王国の王子との婚姻許可と多岐に渡った。
リーゼは王都のタウンハウスを引き払っている時
新しい婚約者であるマーズ王国王子のメイズがやって来た。
『マーカスが腹いせで嫌がらせに来るだろう』
そう判断したメイズは多くの護衛を引き連れて来た。
案の定、 マーカスが兵を引き連れてやって来た、 何故か顔を包帯で隠して。
そして嫌がらせに来たのではなく、 シー子爵令嬢の誘拐犯としての逮捕だった。
探偵内海は宝船を仕舞いこむ
八木山
ミステリー
▼登場人物
内海:
元警官の探偵。立ち位置は右。
「なんぼあってもいい」ものをポケットに入れて依頼を引き受ける。
駒場:
敏腕マッチョ刑事。立ち位置は左。
本来なら事件の真相にたどり着いているはずだが、情報を整理できないせいで迷宮入りになりかける。
ヨシノ:
IQは200を超え、この世の全ての答えを知る男。
※品田遊先生の方が百倍面白いものを書いてます
【完結】深海の歌声に誘われて
赤木さなぎ
ミステリー
突如流れ着いたおかしな風習の残る海辺の村を舞台とした、ホラー×ミステリー×和風世界観!
ちょっと不思議で悲しくも神秘的な雰囲気をお楽しみください。
海からは美しい歌声が聞こえて来る。
男の意志に反して、足は海の方へと一歩、また一歩と進んで行く。
その歌声に誘われて、夜の冷たい海の底へと沈んで行く。
そして、彼女に出会った。
「あなたの願いを、叶えてあげます」
深海で出会った歌姫。
おかしな風習の残る海辺の村。
村に根付く“ヨコシマ様”という神への信仰。
点と点が線で繋がり、線と線が交差し、そして謎が紐解かれて行く。
―― ―― ―― ―― ―― ―― ――
短期集中掲載。毎日投稿します。
完結まで執筆済み。約十万文字程度。
人によっては苦手と感じる表現が出て来るかもしれません。ご注意ください。
暗い雰囲気、センシティブ、重い設定など。
【か】【き】【つ】【ば】【た】
ふるは ゆう
ミステリー
姉の結婚式のために帰郷したアオイは久しぶりに地元の友人たちと顔を合わせた。仲間たちのそれぞれの苦痛と現実に向き合ううちに思いがけない真実が浮かび上がってくる。恋愛ミステリー
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
パンアメリカン航空-914便
天の川銀河
ミステリー
ご搭乗有難うございます。こちらは機長です。
ニューヨーク発、マイアミ行。
所要時間は・・・
37年を予定しております。
世界を震撼させた、衝撃の実話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる