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#4 放課後殺人ショー【復讐篇】

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 確実に安藤達の間に絆が生まれつつあった。ただ日常生活を送っていただけでは生まれなかった絆が。それを確かめるかのごとく本田の言葉に安藤が応えようとした瞬間、姫乙が無表情になっていることに気づいた。これまでも何度か見たことがあったが、その表情なき表情に背筋が冷たくなる。

「黙って聞いてりゃあ、くだらねぇもんに酔いしれやがって――くそガキ共が」

 喜怒哀楽を失いながらも、その無表情な顔の口から飛び出す言葉には、明確な悪意のようなものがあった。

「団結? 仲間? これまでカーストとかいうくだらねぇものに縛られて、絶対に関わり合うことのなかった連中がよ、こうして人数が減った途端に仲良しごっこを始めるとか――マジでウケるわ」

 これまでの姫乙ではない。一度も2年4組で見せたことのないような様子の姫乙に、教室も静まり返った。その静寂を真綾が打ち破る。

「一緒に困難を乗り越えてきたんだから、絆のひとつやふたつできて当然じゃね?」

 真綾の言葉を鼻で笑い飛ばす姫乙。彼の中で何かがキレてしまった――そんな感じがする。

「私達、ズッ友だよ――とか言ってた女子グループほど、学校を卒業してバラバラになった途端、連絡を取り合わなくなって気がつくと疎遠になっている。いじめられている奴とか、クラスに馴染めないぼっちがいるというのに、体育祭では一致団結した――とか言い出す。むしろ、一致団結してんのはクラスでも目立つ部類の連中だけなのに、クラスを束ねた気になっている」

 姫乙が無表情で紡ぎ続ける言葉を、みんなはどんな風に受け止めているのだろうか。それとも聞き流しているのだろうか。これまでの姫乙とは明らかに様子が異なるせいか、どうにも言葉ひとつひとつが不気味に思えてしまう。

「夫となり家庭を養う大変さ、妻となり家庭を守る大変さ、そして子どもを育てる大変さ――世の中にどれだけの税金の種類があって、どれだけ帝国政府に納めねばならないかさえ知らないくらい生活力もないくせに、ちょっと付き合い出しただけで、結婚をしようとか言い出すカップル。率先していじめをしたり、嫌いな奴をハブしたりする主犯格的な女子のティッシュボックスには、なぜか【世界中のみんなが幸せになりますように】と、もう意味の分からない落書きがある。なにが言いたいかと言うと――」

 長々と言葉を連ねた姫乙だったが、そこで大きく息を吸って、言葉と一緒に吐き出す。

「高校生風情が調子に乗んなってことだよ!」
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