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それぞれの週末【3】

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 アンジョリーヌの雰囲気から、尋常ではないことを察しているのであろう。誰かが固唾を飲み込む音が聞こえた。

『みんなに集まってもらったのは他でもないわ。これから私のやることに力を貸して欲しいの。もちろん強制はしないし、嫌だと思ったらやらなくていい。でも、協力してくれる人数が多ければ多いほど、結果も安定してくれると思う』

 アンケート用紙の裏側に書くと、足立達のほうへとペンごと差し出す。すぐに足立がペンを手に取った。

『具体的にはどんなことをするんですか?』

 当たり前であるが、抽象的な書き出し方で足立達も首を縦に振ったりはしない。何をするのか聞くのは当然のことであろう。まぁ、口にできないことを話すために筆談にしたわけだし、もちろん具体的に答えるつもりでもいた。アンジョリーヌは新たにアンケート用紙を手に取ると、足立から無言でボールペンを受け取った。そして、具体的な内容を書き出す。

 アンケート用紙を丸々一枚使って、具体的な内容――あの、大槻芽衣から頼まれたことを書き出した。まだ詰めの段階であり、完璧ではないらしいから、ところどころ変更はあるかもしれないとのことだが、これだけ見れば足立達も理解はしてくれると思う。

 まず足立がアンケート用紙を手に取り、アンジョリーヌが一心不乱に書いた文章に目を通す。足立は大きく溜め息をつくと、そのままアンケート用紙を阿部に手渡した。しばらく無表情で文章に目を通していた阿部は、やはり足立と同じように溜め息を漏らしつつ、最後の池田へとアンケート用紙を渡した。

 もしみんなが同意してくれなかったら、一人でもやるつもりでいる。しかしながら、そうなるとどうしても不自然になってしまう点も出てくる。アンジョリーヌだって人間だからミスもするだろうし、芽衣の策略のクオリティーが下がることだけは間違いない。

『どう?』

 店からすれば迷惑で仕方がないだろう。またしても新たにアンケート用紙を手に取ったアンジョリーヌは、その一言だけを大きく書くと、三人に向かって差し出した。

 阿部には守るべき家庭があるだろうから、無理強いはできない。できれば独身である足立と池田には力を貸して欲しいのだが――彼らだって人間であるし、嫌なものは嫌に違いない。

「ちょっと俺達で相談させてくれないか?」

 阿部がそう言うと足立と池田が頷く。筆談ではなく、また密談でもなく、三人は目を合わせると大きく頷いた。それは、話し合うまでもなく、答えは決まっていたということなのか。阿部が足立と池田の二人と再びアイコンタクトをかわし、そして三人同時に同じ言葉を吐き出した。それはアンジョリーヌが待ちわびた言葉でもあったのだった。

「――やるに決まってるだろ!」


【Go to next homeroom】
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