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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【エピローグ】

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「それで、実際に事件が起きた時に、大槻からの連絡を受けて鑑識官の中に紛れ込んだってわけか――。もしばれたらどうするつもりだったんだよ?」

 坂崎の親友である本田にとって、やはり坂崎だけは特別な存在なのであろう。まるで自分のことであるかのように心配そうな表情を見せる。互いに心が打ち解けてきた安藤達にさえ見せない顔である。

「ばれても俺は単なる追放者だからな。命までは取られないだろうと踏んでたんだよ。それにさ、俺が根津達を殺したのは――クラスメイトを大勢殺してしまったことはまぎれもない事実なんだ。それが間接的であったとしてもな。だから、俺は罪滅ぼしをしなきゃいけない。こんなもんじゃ足りないかもしれないけど、みんなの仇が討てるなら、どんなに危険なことでもやってやるさ」

 そう言って寂しげな笑みを浮かべた坂崎。アベンジャーは人を殺しても罪には問われない。けれども、罪悪感もなかったことになるわけではない。間接的であったとしても、姫乙から強制的にやらされたとしても、坂崎の心の中にある十字架の重さは計り知れないのだ。

「それで、鑑識官に紛れ込んだ君は、うまいこと姫乙にとって不利になる情報を手に入れ、それを安藤君にパスしたわけね――」

 アンジョリーヌはそう言うと「いただくわね」とコーヒーを一口。彼女はこの密談を聞いて何を思っているのだろうか。それに、話の流れから考えて、どうやらこちら側からアンジョリーヌにコンタクトをとったようだが、その意図はどこにあるのか。

「綱渡りの部分もあったけど、あいつら統制ってもんが適当っていうか、良くも悪くもお役所仕事ってやつでさ。事なかれ主義の連中ばかりで、ちょっとでも責任が生じそうなものは避けたがる傾向にある。そのおかげで上手に立ち回れたってわけ」

 毎日のようにグラウンドの隅にある屋外備品庫に通い、ただひたすらに芽衣からの連絡を待つ。これだけでも、かなりの労力だったはずだ。人目につくわけにはいかないから、朝早くに屋外備品庫に忍び込み、無駄になるかもしれない一日を過ごし、また夜遅くになって帰宅する。そして有事の際には鑑識官に扮装ふんそうし、しかもうまい具合に立ち回って決定的な証拠を手に入れる。最終的に安藤へと決定的な証拠をパス。おかげで事件は解決を迎えた。敵を欺くには味方からというが、坂崎の立ち回りは完璧。行き当たりばったりの出たとこ勝負だったとすれば、大勝利だといえるだろう。
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