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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【エピローグ】

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「誰もそこまで聞いてないだろうが――」

 余計なことまで口走ってしまったアンジョリーヌに、本田が間髪入れずに返した。それがどうやら芽衣のツボに入ったのか、彼女は顔を伏せて肩を小刻みに震わせる。安藤も思わず吹き出してしまった。それらを払拭するかのごとく、アンジョリーヌは実にわざとらしい咳払いをする。

「とにかく、それはいいとして――私にも事情を説明してもらえないかしら? 実はあなた達に接触しているだけでもかなりリスキーなの。そのリスクを背負って私がここに来ている意味、聡明なあなた達のことだから分かっているでしょうね」

 事情を説明して欲しいのは、むしろこちらのほうである。話があるとのことで芽衣の自宅へとやってきたわけであるが、現時点で分かっているのは、恐らく坂崎と安藤達を会わせたかったであろうということくらいだ。多分、芽衣が電話口で言っていたイレギュラーとは、アンジョリーヌのことなのであろう。

「いちから説明させてもらいます。どうせ安藤君や本田君にも説明しなければならないことだから」

 芽衣がそう言ってテーブルの空席に視線をやる。それの意味を察したのか、坂崎とアンジョリーヌが空席へと着席。一度キッチンのほうに向かった芽衣が、しばらくしてコーヒーを持ってくる。アンジョリーヌの前にカップを置くと、芽衣自身は上座の位置に立った。形はいびつであるが円卓会議といったところか。

「まず、坂崎君のことについて。実は彼にはあることをお願いしていたの。敵を騙すにはまずは味方からってことで、誰にも言ってはいなかったのだけど、結果的にかなり際どいことをやってもらったことになったから、誰にも言わなくて正解だったわ」

 芽衣が坂崎にしていたお願い。もちろん、そんなことは芽衣から聞かされていなかったし、どういう形で坂崎が関与していたのかも分からない。坂崎のほうにみんなの視線が集まり、そして坂崎がやや間を置いてから口を開いた。

「安藤、俺からのラブレターを受け取ってくれてありがとうな。あれ、俺がお前の足元に投げつけたやつなんだわ」

 坂崎の言葉を聞いて真っ先に思い浮かべたのは、唐突に安藤の足元に投げ込まれた決定的な証拠だった。でも、あの場に坂崎はいなかったはずなのに――なぜ。

「安藤君、本田君――実はね、坂崎君には鑑識官としてホームルームに参加してもらっていたのよ」

 それを聞いて、一瞬時が止まった。数秒くらいしてから安藤と本田の口から同時に「えっ?」との疑問符が飛び出た。
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