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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【エピローグ】
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女性は安藤達のほうを見ると、深々と頭を下げてくる。正直、どこの誰なのかさえ分からない人に、いきなり頭を下げられても、どうして良いのか分からない。結果、本田と共々、実に中途半端な会釈を返すような形になった。
「――な? 言っただろ? 自分で思っているより普段の化粧が濃いんだって。どう見ても、安藤も一馬もあんたのこと知らない人って感じで認識してるし。素っぴんにマスクでもかけときゃ大丈夫だって言ってたの、間違っていなかったでしょ?」
坂崎はまるで勝ち誇ったかのように口を開き、そしてマスクの女性はマスク越しに深い溜め息を落とした。表情の変化は目元でしか分からないが、決して穏やかな感じではなかった。
「大槻さん、どう思う? 私って、そんなに普段から化粧濃いかしら? 女性の目から見て――」
「濃いというより、テレビ映えすると言ったほうがいいのかもしれない。誰かに不快感を与えるわけでもないし、むしろ好感がもてると思う。まぁ、素っぴんと化粧をした時の差が大きいかどうかは別にして」
誠に申しわけないことであるが、芽衣のコメントを聞いて、ようやくそれが誰であるかに気づいた。特に目元なんかはアイラインがきっちりと入っているし、まつ毛も恐らくは付けまつ毛というやつなのであろう。目がぱっちりとした印象が強いのだが、それもまた化粧マジックだったということか。
「え? アンジョリーヌ……さん?」
確信は持てなかった。そもそも国営テレビの人気キャスターが、お忍びで――しかも全国から良くも悪くも注目を集めている2年4組の密談に姿を現わすなんて思えない。ただ、彼女は姫乙に対しては否定的だったし、立ち位置としては安藤達の味方となり得るポジションにいる。確信はなくとも、あり得ないということもなかった。
「――だったら何? えぇ、どうせ女ってのはね、化粧で化けているものなんです。でもね、化粧が映えるにはそれなりの地盤というものが必要なの。それだけは勘違いしないでね」
そう言うと女はマスクをとった。その下からは、国民の誰もが知っている人気キャスターであるアンジョリーヌの顔が――。
「……てか、素っぴんは全体的になんか貧相な感じなんだな。面影はあるけど」
マスクを取った女の顔は、確かにアンジョリーヌである。カメラの前でハキハキと物事を喋る彼女を、全体的に貧相にしたような感じである。本田の感想は的確だった。
「こうなったら社員証見せましょうかね? えぇ、どうせ貧相ですよ。特に目と胸が!」
「――な? 言っただろ? 自分で思っているより普段の化粧が濃いんだって。どう見ても、安藤も一馬もあんたのこと知らない人って感じで認識してるし。素っぴんにマスクでもかけときゃ大丈夫だって言ってたの、間違っていなかったでしょ?」
坂崎はまるで勝ち誇ったかのように口を開き、そしてマスクの女性はマスク越しに深い溜め息を落とした。表情の変化は目元でしか分からないが、決して穏やかな感じではなかった。
「大槻さん、どう思う? 私って、そんなに普段から化粧濃いかしら? 女性の目から見て――」
「濃いというより、テレビ映えすると言ったほうがいいのかもしれない。誰かに不快感を与えるわけでもないし、むしろ好感がもてると思う。まぁ、素っぴんと化粧をした時の差が大きいかどうかは別にして」
誠に申しわけないことであるが、芽衣のコメントを聞いて、ようやくそれが誰であるかに気づいた。特に目元なんかはアイラインがきっちりと入っているし、まつ毛も恐らくは付けまつ毛というやつなのであろう。目がぱっちりとした印象が強いのだが、それもまた化粧マジックだったということか。
「え? アンジョリーヌ……さん?」
確信は持てなかった。そもそも国営テレビの人気キャスターが、お忍びで――しかも全国から良くも悪くも注目を集めている2年4組の密談に姿を現わすなんて思えない。ただ、彼女は姫乙に対しては否定的だったし、立ち位置としては安藤達の味方となり得るポジションにいる。確信はなくとも、あり得ないということもなかった。
「――だったら何? えぇ、どうせ女ってのはね、化粧で化けているものなんです。でもね、化粧が映えるにはそれなりの地盤というものが必要なの。それだけは勘違いしないでね」
そう言うと女はマスクをとった。その下からは、国民の誰もが知っている人気キャスターであるアンジョリーヌの顔が――。
「……てか、素っぴんは全体的になんか貧相な感じなんだな。面影はあるけど」
マスクを取った女の顔は、確かにアンジョリーヌである。カメラの前でハキハキと物事を喋る彼女を、全体的に貧相にしたような感じである。本田の感想は的確だった。
「こうなったら社員証見せましょうかね? えぇ、どうせ貧相ですよ。特に目と胸が!」
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