糾弾ホームルーム！ ―ぼくたち、わたしたちの主張―

＃3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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「おおよそ60パーセント超えです。常に――」

　どれくらいの視聴率が高視聴率かなんて知らない。知らないが、とりあえず60パーセントという数字が高視聴率というレベルを突き抜けて高いということは容易に想像できた。

「あっはっはっはっはっはっ！　超注目されていますねぇ。ネットのほうは検閲があるせいか大人しいですがぁ、果たして国民のみなさまは何を考えながらテレビを観ているのでしょうかぁ？」

　姫乙は教壇から降りると、空席だらけになった教室の中を回り始めた。まるで、テスト時間に見回りをする教師のようだ。

「賭けをしているのだからぁ、さっさと死ねと思っている国民もいるに違いありませぇぇぇん。逆に、誰かには生き残って欲しいけど、誰かには死んで欲しいと思っている人もいるでしょう。なんせ、このホームルームが賭け事の対象になっているのですからぁ」

　悪あがきだ。これは姫乙の悪あがき。負けを認めることのできない愚かな大人の悪あがきに過ぎない。自分に言い聞かせる。

「人間にとって、リアルなのは自分の周囲で起こることだけなんですよぉ。それ以外のものは、現実で起きていることであっても興味の対象にならない。どこぞの飛行機が海外で落ちても、多くの人が犠牲になるテロが起きても、カメラの向こう側の画面は現実であって幻。起きている事実は認めるが、自分には全く関係のないことであるためリアリティが得られない。ゆえにぃ、国民のみなさまは、無意識にこれをエンターテイメントとして見ているのですよぉ」

　教室の後ろのほうまで行くと、歩く列を変えて戻ってくる姫乙。そのほとんどが空席であることが実に残念。どれだけ多くのクラスメイトが犠牲になったのか、嫌でも実感させられる。

「見世物なんですぅ！　諸君らはぁ！　最初はギクシャクしていた仲間達がぁ、徐々に打ち解けていったりする様だってぇ、立派なエンターテイメントのひとつなんですよぉ！　しょせん、愚かな愚かなピエロなんですぅ！」

「――それは違うわ」

　もはや悪あがきの手段さえ選ばない姫乙に対して、冷たく言い放ったのは芽衣だった。彼女がいてくれたから、どこか客観的に状況を見守ることができたが、もしいなかったらと思うとぞっとする。

「あなたは違うかもしれないけど、人は物語にハッピーエンドを求めたがる。これを見ている国民の中で、あなたの言うようにエンターテイメントとして観ている人だっているでしょう。でもね――その大半の人達は、きっとハッピーエンドを求めている。私達が勝つことを願ってくれているのよ。それって結果的に、私達の味方をしてくれていることにならない？」