糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
358 / 468
#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

70

しおりを挟む
 安藤は拾い上げた手紙らしきものを開いてみる。随分と紙質も良く、無造作に自分の足元に投げ入れられたものとは思えないほどの内容でもあった。

「――これは」

 思わず息を飲んだ。慌てて周囲を見回す。これを……こんなものを誰が安藤の足元に投げ入れたのか。普通に考えてクラスメイトには実行できない。アンジョリーヌ達にも無理だろう。だとすれば、これを投げたのは鑑識官か兵隊ということになる。いいや、内容から察するに鑑識官の仕業である可能性が高い。

 開いた紙は正式な資料のようなものであり、天井裏らしき写真が何枚か張り付けられていた。みんなが問題視していた、固定用のガムテープを剥がした写真もあった。

「安藤君、それ――なんなの?」

 芽衣の一言はみんなの気持ちを代弁していたのだと思う。ここにいるクラスメイトだけではなく、アンジョリーヌ達、そしてカメラの向こう側にいる数多の人々の代弁だ。もちろん、こんなものを一人で抱えているのは安藤個人としてはキツイものがある。姫乙が動く前に先手を打ってやりたいというのもあった。

「あの、国営テレビの方、ちょっと僕の手元に寄れますか?」

 まだ姫乙は事の重大さに気付いていない。そんな今こそが絶対的のチャンス。安藤の問いかけに対してカメラマンがカメラを弄り、そしてアンジョリーヌが大きく両手で丸をつける。

「アンジョリーヌさん、せっかくだから全国の人にも説明してあげてください」

 ここまできたら、数の暴力で姫乙を徹底的に晒し者にする。言い訳もごまかしもきかないように、既成事実を先に作ってやるのだ。少しばかり姫乙のやり方に――政府のやり方に異議を唱えていたアンジョリーヌは、安藤の申し出にすぐさま反応を示し、ヒールでありながら駆け足で安藤のところへとやってくる。

「えー、いよいよ終盤を迎えていたホームルームですが、ここで何か大きな動きがあったようです。こちら、みなさんもご存知だと思います。安藤さんです。安藤さん、それは一体何なのですか?」

 アンジョリーヌはそう言いながらも、すでに横目で安藤が手にする文書を読んでいた。それがなんであるか分かった瞬間、驚いたかのように目を丸くしたが、その辺りはさすがプロフェッショナルといったところか。顔には出さず、あえて安藤の口から言葉を引っ張り出そうとする。

「これ、大日本帝国政府の判も押してあるので正式なものなんだと思います。とりあえずカメラでしっかり映してもらっていいですか?」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】知られてはいけない

ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 (第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...