356 / 468
#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】
68
しおりを挟む
小雪もまた、自殺願望のようなものを抱いていた。それこそ、途中でホームルームを混乱させるような発言までしている。ダイイングメッセージを読み解き、香純のことを犯人に仕立て上げようとしたのも彼女だ。
「いいや、状況が星野崎が犯人だと物語っている。むしろ、星野崎が犯人じゃなかったら、この事件は成立さえしなかった。姫乙、お前の言っていることはただの屁理屈だ!」
天井のボウガンを用いた殺人偽装。それを見事に実行できたのは、全ての仕組みを知っていた星野崎だからこそだ。もし第三者が同様の手段で星野崎を殺害しようとした場合、どうしても運に頼るような場面が出てくる。チャンスはたった一度しかないし、捜査の段階で天井裏のボウガンの存在まで明らかにされてしまった。背負ったリスクに対して結果が伴っていない。
「安藤君、あなたの推測だと、天井裏には星野崎君の指紋が残っているのよね? だったら、改めて姫乙に確認してみましょうよ。はぐらかされても嫌だから、具体的にね」
姫乙との押し問答に、芽衣が助け舟を出してくれた。明確にならず曖昧になっている部分を掘り下げることで姫乙の逃げ道を塞ぐつもりらしい。その意図を察したのか、本田が口を開く。
「そうだな。この中の人間の指紋が検出されなかった――って結果しか聞いてねぇからなぁ。もし誰かの指紋が検出されたのなら、それが誰のものだったのか俺達に教えろよ」
本田が加勢したからなのか、他のクラスメイトも同じようなことを口にする。引っ込み思案な舞と、もはや今となっては何を考えているのかよく分からない小雪は黙っていたようだが、真綾に香純、小宮山が口々に不満を漏らした。それだけ、姫乙の態度に腹が立っていたのであろう。
「姫乙――天井裏で星野崎の指紋は発見されたのか? イエスかノーで答えて欲しい」
周囲が少し落ち着いてから、改めて口を開く安藤。しかしながら、この程度で姫乙という男は折れたりしない。
「天井裏の指紋に関してはぁ、しっかりと一度答えを出しているはずですぅ。諸君らの疑問に対してぇ、姫乙は誠意をもってお答えしたわけですぅ。ですからぁ、改めてお答えする必要はなしっ! 天井裏に星野崎君の指紋が残っていたのか知りたかったのであれば、諸君らがもっと具体的に鑑識官を使えば良かっただけのことですぅ。それをまるでこちらが悪いみたいな言い方をされましてもねぇ」
駄目である。まるで駄目。屁理屈を繰り返すばかりで肝心なことは話さない。大日本帝国政府の議員の常套手段だ。
「いいや、状況が星野崎が犯人だと物語っている。むしろ、星野崎が犯人じゃなかったら、この事件は成立さえしなかった。姫乙、お前の言っていることはただの屁理屈だ!」
天井のボウガンを用いた殺人偽装。それを見事に実行できたのは、全ての仕組みを知っていた星野崎だからこそだ。もし第三者が同様の手段で星野崎を殺害しようとした場合、どうしても運に頼るような場面が出てくる。チャンスはたった一度しかないし、捜査の段階で天井裏のボウガンの存在まで明らかにされてしまった。背負ったリスクに対して結果が伴っていない。
「安藤君、あなたの推測だと、天井裏には星野崎君の指紋が残っているのよね? だったら、改めて姫乙に確認してみましょうよ。はぐらかされても嫌だから、具体的にね」
姫乙との押し問答に、芽衣が助け舟を出してくれた。明確にならず曖昧になっている部分を掘り下げることで姫乙の逃げ道を塞ぐつもりらしい。その意図を察したのか、本田が口を開く。
「そうだな。この中の人間の指紋が検出されなかった――って結果しか聞いてねぇからなぁ。もし誰かの指紋が検出されたのなら、それが誰のものだったのか俺達に教えろよ」
本田が加勢したからなのか、他のクラスメイトも同じようなことを口にする。引っ込み思案な舞と、もはや今となっては何を考えているのかよく分からない小雪は黙っていたようだが、真綾に香純、小宮山が口々に不満を漏らした。それだけ、姫乙の態度に腹が立っていたのであろう。
「姫乙――天井裏で星野崎の指紋は発見されたのか? イエスかノーで答えて欲しい」
周囲が少し落ち着いてから、改めて口を開く安藤。しかしながら、この程度で姫乙という男は折れたりしない。
「天井裏の指紋に関してはぁ、しっかりと一度答えを出しているはずですぅ。諸君らの疑問に対してぇ、姫乙は誠意をもってお答えしたわけですぅ。ですからぁ、改めてお答えする必要はなしっ! 天井裏に星野崎君の指紋が残っていたのか知りたかったのであれば、諸君らがもっと具体的に鑑識官を使えば良かっただけのことですぅ。それをまるでこちらが悪いみたいな言い方をされましてもねぇ」
駄目である。まるで駄目。屁理屈を繰り返すばかりで肝心なことは話さない。大日本帝国政府の議員の常套手段だ。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
完結【第7回ホラー・ミステリー小説大賞サスペンス応募作】宝石の行方
Mr.後困る
ミステリー
ルイ王国のラズ公爵家の令嬢リーゼはルイ王国王太子のマーカスと婚約破棄を行った。
マーカスの不貞が原因でリーゼの長年の妃教育を加味した慰謝料は
広大な領地、 莫大な賠償金、 リーゼの隣国マーズ王国の王子との婚姻許可と多岐に渡った。
リーゼは王都のタウンハウスを引き払っている時
新しい婚約者であるマーズ王国王子のメイズがやって来た。
『マーカスが腹いせで嫌がらせに来るだろう』
そう判断したメイズは多くの護衛を引き連れて来た。
案の定、 マーカスが兵を引き連れてやって来た、 何故か顔を包帯で隠して。
そして嫌がらせに来たのではなく、 シー子爵令嬢の誘拐犯としての逮捕だった。
【完結】深海の歌声に誘われて
赤木さなぎ
ミステリー
突如流れ着いたおかしな風習の残る海辺の村を舞台とした、ホラー×ミステリー×和風世界観!
ちょっと不思議で悲しくも神秘的な雰囲気をお楽しみください。
海からは美しい歌声が聞こえて来る。
男の意志に反して、足は海の方へと一歩、また一歩と進んで行く。
その歌声に誘われて、夜の冷たい海の底へと沈んで行く。
そして、彼女に出会った。
「あなたの願いを、叶えてあげます」
深海で出会った歌姫。
おかしな風習の残る海辺の村。
村に根付く“ヨコシマ様”という神への信仰。
点と点が線で繋がり、線と線が交差し、そして謎が紐解かれて行く。
―― ―― ―― ―― ―― ―― ――
短期集中掲載。毎日投稿します。
完結まで執筆済み。約十万文字程度。
人によっては苦手と感じる表現が出て来るかもしれません。ご注意ください。
暗い雰囲気、センシティブ、重い設定など。
探偵内海は宝船を仕舞いこむ
八木山
ミステリー
▼登場人物
内海:
元警官の探偵。立ち位置は右。
「なんぼあってもいい」ものをポケットに入れて依頼を引き受ける。
駒場:
敏腕マッチョ刑事。立ち位置は左。
本来なら事件の真相にたどり着いているはずだが、情報を整理できないせいで迷宮入りになりかける。
ヨシノ:
IQは200を超え、この世の全ての答えを知る男。
※品田遊先生の方が百倍面白いものを書いてます
パンアメリカン航空-914便
天の川銀河
ミステリー
ご搭乗有難うございます。こちらは機長です。
ニューヨーク発、マイアミ行。
所要時間は・・・
37年を予定しております。
世界を震撼させた、衝撃の実話。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる