351 / 468
#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】
63
しおりを挟む
「今回のアベンジャーは間違いなく星野崎だ。その証拠は――アベンジャーが勝った時に叶えられる願いにある。そして、これこそが姫乙の犯した決定的なミスでもあるんだ。今だからこそ言えることだけど、アベンジャーへのご褒美が提示された時点で、僕達は犯人が星野崎であると気づける余地があったんだよ」
もうたくさんだ。こんな形で注目されることも、目立つことも。そして、賞賛されることも。自分は地味で目立たない男子高校生でいい。大人になってから振り返った時に、高校時代こそ暗黒時代だったと思えてもいい。そう、昼安藤は昼安藤のままでいいのだ。
「結構。この姫乙のどこに間違いがあったのでしょうかぁ? カメラに向かってお答えくださいぃぃぃぃ。さぁ、この状況を見守っている国民の方々へと向けてぇ、何が間違っていたのかを教えて差し上げるのですぅ」
姫乙がやけにカメラを意識させるのは、土壇場で余計なプレッシャーを与えるためだろう。この状況下で安藤に精神的な重圧を与え、万が一にも安藤がミスを犯すように誘っているような気がする。――ならば負けない。そんなに弱い人間ではないことを証明してやろうではないか。
「姫乙、その前に僕からお願いがある。ホームルームが始まる前に読み上げたように、もう一度だけアベンジャーへのご褒美の内容を読み上げてもらえないかな? もちろん、カメラに向かってね」
やり返す。姫乙が精神的な重圧をかけてくるのであれば、こちらも同じように攻撃させてもらう。自分が明確やミスをしてしまった部分を、カメラ越しに自ら晒さなければならなくなるのだ。これは屈辱であろう。姫乙の表情が引きつったように見えたのは、きっと気のせいではない。
「えぇ、構いませんよぉ。確か――アベンジャーを含む2年4組全員皆殺しです。今回のは残酷でありながらシンプルなものでしたからぁ、はっきりと覚えていますぅ」
そう、今回のアベンジャーの願いはいたってシンプル。残酷でありながらも、その内容はアベンジャーを含む2年4組の皆殺しだ。しかし、実はこのような形で願いを出すのは、星野崎以外に考えられないのだ。
「もし僕がアベンジャーだったら、多分、こういう形でお願いしていただろうね。つまり、アベンジャー全員皆殺し――とね」
安藤が静かに言い放つと、ずっと黙っていたアンジョリーヌが「えっ?」と漏らす。本人が意図せずに出てしまったものだったのか、慌てて口元に手をやる。もちろん、そんなことをしても漏れてしまったものは漏れてしまったのだが、そんな仕草が少しだけ可愛くも見えた。
もうたくさんだ。こんな形で注目されることも、目立つことも。そして、賞賛されることも。自分は地味で目立たない男子高校生でいい。大人になってから振り返った時に、高校時代こそ暗黒時代だったと思えてもいい。そう、昼安藤は昼安藤のままでいいのだ。
「結構。この姫乙のどこに間違いがあったのでしょうかぁ? カメラに向かってお答えくださいぃぃぃぃ。さぁ、この状況を見守っている国民の方々へと向けてぇ、何が間違っていたのかを教えて差し上げるのですぅ」
姫乙がやけにカメラを意識させるのは、土壇場で余計なプレッシャーを与えるためだろう。この状況下で安藤に精神的な重圧を与え、万が一にも安藤がミスを犯すように誘っているような気がする。――ならば負けない。そんなに弱い人間ではないことを証明してやろうではないか。
「姫乙、その前に僕からお願いがある。ホームルームが始まる前に読み上げたように、もう一度だけアベンジャーへのご褒美の内容を読み上げてもらえないかな? もちろん、カメラに向かってね」
やり返す。姫乙が精神的な重圧をかけてくるのであれば、こちらも同じように攻撃させてもらう。自分が明確やミスをしてしまった部分を、カメラ越しに自ら晒さなければならなくなるのだ。これは屈辱であろう。姫乙の表情が引きつったように見えたのは、きっと気のせいではない。
「えぇ、構いませんよぉ。確か――アベンジャーを含む2年4組全員皆殺しです。今回のは残酷でありながらシンプルなものでしたからぁ、はっきりと覚えていますぅ」
そう、今回のアベンジャーの願いはいたってシンプル。残酷でありながらも、その内容はアベンジャーを含む2年4組の皆殺しだ。しかし、実はこのような形で願いを出すのは、星野崎以外に考えられないのだ。
「もし僕がアベンジャーだったら、多分、こういう形でお願いしていただろうね。つまり、アベンジャー全員皆殺し――とね」
安藤が静かに言い放つと、ずっと黙っていたアンジョリーヌが「えっ?」と漏らす。本人が意図せずに出てしまったものだったのか、慌てて口元に手をやる。もちろん、そんなことをしても漏れてしまったものは漏れてしまったのだが、そんな仕草が少しだけ可愛くも見えた。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 ~社交の輪を広げてたらやっぱりあの子息が乱入してきましたが、それでも私はマイペースを貫きます~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「『和解』が成ったからといってこのあと何も起こらない、という保証も無いですけれどね」
まぁ、相手もそこまで馬鹿じゃない事を祈りたいところだけど。
***
社交界デビューで、とある侯爵子息が伯爵令嬢・セシリアのドレスを汚す粗相を侵した。
そんな事実を中心にして、現在社交界はセシリアと伯爵家の手の平の上で今も尚踊り続けている。
両者の和解は、とりあえず正式に成立した。
しかしどうやらそれは新たな一悶着の始まりに過ぎない気配がしていた。
もう面倒なので、ここで引き下がるなら放っておく。
しかし再びちょっかいを出してきた時には、容赦しない。
たとえ相手が、自分より上位貴族家の子息であっても。
だって正当性は、明らかにこちらにあるのだから。
これはそんな令嬢が、あくまでも「自分にとってのマイペース」を貫きながら社交に友情にと勤しむ物語。
◇ ◆ ◇
最低限の『貴族の義務』は果たしたい。
でもそれ以外は「自分がやりたい事をする」生活を送りたい。
これはそんな願望を抱く令嬢が、何故か自分の周りで次々に巻き起こる『面倒』を次々へと蹴散らせていく物語・『効率主義な令嬢』シリーズの第4部作品です。
※本作品までのあらすじを第1話に掲載していますので、本編からでもお読みいただけます。
もし「きちんと本作を最初から読みたい」と思ってくださった方が居れば、第2部から読み進める事をオススメします。
(第1部は主人公の過去話のため、必読ではありません)
以下のリンクを、それぞれ画面下部(この画面では目次の下、各話画面では「お気に入りへの登録」ボタンの下部)に貼ってあります。
●物語第1部・第2部へのリンク
●本シリーズをより楽しんで頂ける『各話執筆裏話』へのリンク
呪配
真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。
デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。
『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』
その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。
不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……?
「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!
くぐり者
崎田毅駿
歴史・時代
黒船来航を機に天下太平の世が揺れ始めた日本。商人に身をやつしていた忍びの一流派である鵬鴻流の鳳一族は、本分たる諜報において再び活躍できることを夢見た。そのための海外の情報を収集をすべく、一族の者と西洋人とが交わって生まれた通称“赤鹿毛”を主要な諸外国に送り込むが、果たしてその結末やいかに。
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる