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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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 星野崎が全てを仕組んだのであれば、完璧に星野崎を誘導することができる。なぜなら、殺すのも殺されるのも星野崎なのだから。――クラスメイト全員にアリバイがあって当然。なぜなら、殺すのも殺されるのも星野崎なのだから。

 犯人と被害者がイコールで繋がる。被害者と犯人がイコールで繋がる。それならば、完璧に犯行を実行することができる。犯罪を実行するのも、その犯罪によって命を落とすのも星野崎なのだから完璧にやれて当然。御都合主義のような展開になっても当たり前なのである。

「さてぇ、安藤君。ひとつだけ姫乙から質問させてくださぁぁぁぁぁい。確かにぃ、お話を聞いているだけではぁ、星野崎君が自殺したという可能性もあるでしょう。しかしぃ、それはあくまでも可能性でありぃ、星野崎君が殺害された可能性がゼロになったわけではありませぇぇぇん。ですからぁ、そろそろご提示願えませんかぁ? 星野崎君が自殺であるという決定的な根拠と証拠をですぅぅぅ」

 姫乙は抜かりない。このまま推測だけ突破させてくれるほど甘くはないということだ。カメラは相変わらず安藤のことを捉えている。アンジョリーヌもここは一言も喋らず、成り行きを見守っている。全てを託してくれた仲間達は――果たして覚悟を決めてくれたのだろうか。

 安藤には明確な根拠があった。少なくとも、今回のアベンジャーが星野崎であるという根拠が。けれども、証拠――と言われると、それは状況証拠の類になってしまうのかもしれない。

 目立ちたい――そんな風に思える人間がうらやましく思えた。今の安藤は、日本中の誰よりも注目されていることだろう。誰もが安藤の言葉を待ち、ホームルームの行き先を見守っている。

 英雄になりたいだなんて思わない。それなりの認証欲求はあるのだろうが、それは必要最低限で良い。そもそも、クラスメイトが次々と死んでいるのに、英雄もへったくれもないと思う。誰一人死なさずして事態を収める。それでこそ英雄であり、だとすれば安藤は足元にも及ばないだろう。だが――それでいいのだ。

 平々凡々でいい。スクールカーストの底辺でも構わない。クラスの中心人物にたまに弄られる程度で、クラスの隅っこで飽きもせず本を読む。決して居心地が良いわけではないし、本田達との壁が瓦解がかいしたことが嫌というわけでもない。

 ありきたりの日常を返せ。努力せずとも、意識せずとも、寝て起きれば当たり前のように訪れていた、いつもの日々を返して欲しい。安藤はそんな自身の思いも込めて、重たい口を開いた。
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