糾弾ホームルーム！ ―ぼくたち、わたしたちの主張―

＃3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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　鑑識官達は安藤達の期待に見合った仕事をしていたのである。けれども、それをダイレクトに安藤達に伝えてしまうのは、なかば答えを教えるようなもの。だから、姫乙は言い回しを変えて、けれども嘘をつかないように言葉を変えたのである。

「ちょっと駆け足になるけど、この勢いのまま続けよう。天井裏で準備を終えた星野崎は、道場の壁にボウガンの矢を突き刺して現場を偽装した。そして、恐らくなんだけど指紋を隠蔽するために使用した手袋なんかは、トイレの掃除用具の中にでも突っ込んだんじゃないかな？　もしかすると、元より手袋なんかはトイレの掃除用具の中から調達したのかもしれない。指紋を拭き取るという手段もあるだろうから、利用されたのはシャワー室に常備してあるタオルでも構わなかっただろうね。なんにせよ、目につく場所には指紋が残らないように小細工をした星野崎は、いよいよ自分の死に場所へと向かったんだ」

　ところどころ、安藤の想像と推測のみの発言もある。星野崎がどのようにして道場に指紋を残さないようにしたのか。その疑問自体、実は大した問題ではない。トイレの掃除用品から手袋を引っ張り出すこともできたし、シャワー室からタオルを持ってくることも星野崎には可能だった。もちろん、使用した後元に戻すこともできた。事実はそれだけでいい。どうやったのかまでは今回の事件に関しては関係ないのだから。

「ここまで来てしまえば後は簡単。ボウガンの矢が飛んでくるであろう場所で、天井に背中を向ける姿勢になって待てばいいだけ。恐らくだけど、かがんだ状態で待っていたんだろうね。そうすれば、天井からボウガンが飛んで来るのが見えないし、とっさに臆してしまうこともない。こうして、思い通りに自らの背中にボウガンの矢を命中させ、星野崎は自殺することに成功した。その直後、越井さんが星野崎の遺体を発見して――偽りの殺人事件が幕を開けたんだ」

　これが全貌。安藤がたどり着いた真実。星野崎が自殺であり、全て自らの意思でやったことならば、これまで奇妙に感じたことも全部解決する。

　星野崎を完璧に誘導するすべなどない。ただし、だが星野崎自身が誘導されるべき場所をしっかりと把握し、そこで待ち構えているのであれば、完璧に誘導されたように見せかけることはできる。

　天井裏に仕掛けられた時限式のボウガンの存在のおかげで、星野崎は自らの背中を射抜くという目的を達成すると同時に、安藤達のアリバイトリックまで作り上げることができる。