糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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 元より発言力のある本田が、こういう時に発言してくれると実に助かる。後押しをされるというか後ろ盾になってもらえるというか。まさか、クラスでも苦手な部類に入っていた本田が、こんなに頼れる人物になるとは思えなかった。

「そう。あれはダイイングメッセージに見せかけようとした星野崎の自作自演だった。だから、当たり前だけど筆跡も星野崎のものになるんだ。ダイイングメッセージの偽装は確かにあったけど、それは星野崎本人による、ベクトルの全く違うものだったんだよ」

 姫乙のほうを 一瞥いちべつする。カメラはこちらちらに向けられたままで、その媒体の向こうには沢山の人がいる。見守ってくれている。なら、突っ走るだけだ。とにもかくにも最後まで突っ走る。

「さて、ダイイングメッセージの用意を終えた星野崎は、いよいよ道場へとやって来た。この時点で、僕達は全員体育館前にいて、アリバイがある状態だったんだ。当たり前だよね。この中にいる誰もが、星野崎を殺してなんていなかったんだから」

 安藤達にしっかりと姿を確認されてから道場へと向かった星野崎。もしかすると、姫乙が体育館の前で待機しているように命じたのも、星野崎の犯行を成立させるためだったのかもしれない。あの時、体育館前に全員がいたからこそ、アリバイが成立したわけであり、アリバイが成立したからこそ、それを実現させるために時限式のボウガンが用いられたというミスリードが活きたわけだし。

「道場に入った星野崎は、きっと先に天井裏にのぼったんだと思う。そして、ボウガンを固定する位置を決めてから、まず試射をしたと思われる。これらの準備は、もしかするともっと前から行われていたのかもしれない。道具をあらかじめ道場に運んでおく必要があっただろうからね。もっとも、星野崎が道場に入ってから発見されるまでには、かなりの時間があったはずだから、駆け足でも一連の動作を行う余裕はあったと思われる。なんにせよ、固定位置を決めて試射することで、だいたいどの辺りに矢が飛んでくるかを、星野崎は知っていたんだよ」

 事件を他殺だと考えた場合、何よりも問題となったのが、星野崎の誘導だった。金で誘導したとか、ダイイングメッセージのようになってしまったラブレターの一部によって誘導したとか、色々な意見が出たものの、細かい部分まで誘導することは難しいとの結論にいたった。この時点で暗礁あんしょうに乗り上げてしまったわけだが、自殺だと考えれば謎は簡単に解決してしまう。すなわち、被害者自身が立ち位置を事前に確認しておけば済む話だ。
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