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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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「むしろ、星野崎の背中にボウガンの矢が刺さっていたという事実は、天井裏のボウガンの存在が明らかになったことで、さらに他殺の可能性を強めたんだ。言わば、偽装の理由付けみたいなものが、この時点で完成してしまった」

 小雪を黙らせたいなら、こちらが一方的に言葉をつむぎ、口を挟む隙を与えなければいい。そう考えた安藤は矢継ぎ早に言葉を繰り出す。多少回り道をしても構わないから、ここは手数を稼がねばならない。

「つまり、本命は天井裏からの一撃であり、壁に刺さったボウガンは、星野崎が背後から撃たれたように見せかける偽装工作だった――という偽りのストーリーが僕達の中で連想されてしまったんだ。本当に不思議なものだよね。背中から撃たれているという事実だけで、第三者の存在を無意識に作り上げてしまうんだから」

 安藤達は星野崎の遺体を発見した時点で、星野崎は何者かに殺害された――という先入観を抱いてしまった。そして、一度抱いてしまった先入観というものは、そう簡単に振り払えるものではない。その先入観が今回の事件では利用されてしまったのである。

「しかも、星野崎以外全員にアリバイがある――という状況も、存在しない第三者の存在を作り上げるには絶好の材料になった。状況的に考えて、あの時に星野崎を殺害できた人間はいなかった。でも、後になって時限式で矢を発射するボウガンが発見されたことで、時限装置を利用したアリバイトリックという、実際にはありもしなかったトリックまでをも僕達は作り上げることになってしまった」

 他殺と自殺。星野崎の死因がどちらなのかによって、事件の解釈が全く異なってくる。安藤達は巧みに作り上げられた他殺というルートに、まんまと誘い込まれていたのだ。では、それは果たして誰によってだったのか――言うまでもない、星野崎によってだ。その証拠に、星野崎はあれを握りしめていたのだ。

「極めつけに、星野崎はさも意味深な感じでメッセージの書かれた紙切れを握りしめていた。ここまでくれば、誰も第三者の存在を疑わない。何者かが星野崎を殺害したものだと考える。でも実際は違うんだ。何もかも全て――星野崎の自作自演。僕達を巻き込んだ自殺劇だったのさ」

 安藤が並べ立てる推測に、誰も口を挟まない。挟めないようにしているのだから当然なのだが、誰もが唖然とした様子で安藤の言葉を聞いていた。体が酸素を欲していたのか、そこで一息ついてしまった。もっとも、口を挟んできたのは小雪ではなく芽衣だったが。
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