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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】
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「これは私個人の意見であり、国営テレビは一切関与しておりません。ですが、彼らのことを――2年4組を見守ってきた大人の一人として、どうか彼らには生き延びて欲しいと思っています。テレビをご覧の皆さまの中にも、そう思っている方はいるのではないでしょうか?」
――やり過ぎだ。誰もがアンジョリーヌの口上に、そんなことを思っていたことであろう。この国において政府の存在は絶対である。時代に合わせて政府という名前に変えただけで、その本質は軍隊だ。軍が国を動かしているのは今も変わらず、基本的に政治も支配的なものがほとんど。公共の電波に乗せて、国政を批判するようなことをすれば、反逆罪どころの話では済まないのかもしれない。
「これは私からのお願いです。心の中でそう思っていても、口には出さないで下さい。心の中で留めるだけにしておきましょう。表向きはあくまでも国に誠実な国民であり続けましょう。少しずつ、表向きは国に誠実でありながら、心の中で不信感を抱く国民が増えていく。それは、国にとって脅威になります。表立って武器を取り、反政府軍として狼煙を上げるよりも、よっぽどの脅威なのです」
突如として始まったアンジョリーヌの演説に、姫乙が眉間にしわを寄せたように見えた。国営テレビの看板キャスターと言っても過言ではないアンジョリーヌではあるが、しかし彼女とて国民の一人に過ぎない。
「さて、冗談はさておき、私もそろそろ国に誠実な国民に戻ろうと思います。もちろん、今並べ立てた言葉は全部私の戯言。本気にしないで下さいね。もっとも、もしかすると心の中では2年4組を応援しているのかもしれませんが。さぁ、最後まで見守りましょう」
明らかにこれまでの言葉は冗談ではないし、アンジョリーヌの本音なのだと思う。けれども、人の本心というものは、どんなに科学が発達したとしても見抜く手段はない。カメラの前だからというのもあるが、中々に危ない橋を渡るキャスターである。彼女を味方に引き入れることができれば――とは、安藤の考えではなく、実際に芽衣が口にした言葉だ。彼女が政府に対して反抗的なのは、誰が見ていても分かることなのであろう。
「――結構なご高説、ありがとうございましたぁぁぁ。ひとつだけぇ、忠告しておきますがぁぁぁ、この【糾弾ホームルーム】の主役は国営テレビのキャスター風情ではないのですぅ。今のは特別に目を瞑りますがぁ、気をつけるように」
――やり過ぎだ。誰もがアンジョリーヌの口上に、そんなことを思っていたことであろう。この国において政府の存在は絶対である。時代に合わせて政府という名前に変えただけで、その本質は軍隊だ。軍が国を動かしているのは今も変わらず、基本的に政治も支配的なものがほとんど。公共の電波に乗せて、国政を批判するようなことをすれば、反逆罪どころの話では済まないのかもしれない。
「これは私からのお願いです。心の中でそう思っていても、口には出さないで下さい。心の中で留めるだけにしておきましょう。表向きはあくまでも国に誠実な国民であり続けましょう。少しずつ、表向きは国に誠実でありながら、心の中で不信感を抱く国民が増えていく。それは、国にとって脅威になります。表立って武器を取り、反政府軍として狼煙を上げるよりも、よっぽどの脅威なのです」
突如として始まったアンジョリーヌの演説に、姫乙が眉間にしわを寄せたように見えた。国営テレビの看板キャスターと言っても過言ではないアンジョリーヌではあるが、しかし彼女とて国民の一人に過ぎない。
「さて、冗談はさておき、私もそろそろ国に誠実な国民に戻ろうと思います。もちろん、今並べ立てた言葉は全部私の戯言。本気にしないで下さいね。もっとも、もしかすると心の中では2年4組を応援しているのかもしれませんが。さぁ、最後まで見守りましょう」
明らかにこれまでの言葉は冗談ではないし、アンジョリーヌの本音なのだと思う。けれども、人の本心というものは、どんなに科学が発達したとしても見抜く手段はない。カメラの前だからというのもあるが、中々に危ない橋を渡るキャスターである。彼女を味方に引き入れることができれば――とは、安藤の考えではなく、実際に芽衣が口にした言葉だ。彼女が政府に対して反抗的なのは、誰が見ていても分かることなのであろう。
「――結構なご高説、ありがとうございましたぁぁぁ。ひとつだけぇ、忠告しておきますがぁぁぁ、この【糾弾ホームルーム】の主役は国営テレビのキャスター風情ではないのですぅ。今のは特別に目を瞑りますがぁ、気をつけるように」
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