糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作

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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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「さてぇ、そろそろ仕上げに入ったほうがよろしいのではないでしょうかぁ? ごたごたとしていたせいもあったのかもしれませんがぁ、残り時間は後15分になっていますぅ。皆殺しになりたくなければぁ、正しい答えを導き出すしかありませぇぇぇぇん」

 これまではグループ毎に分かれて議論を進めてきたが、しかしいよいよひとつの答えへと全てをまとめねばならない時間がやってきたようだ。泣いても笑っても安藤達が答えとして提示することができるのはひとつだけ。複数の答えを提示することはできず、だからこそ全員で話をひとつにまとめなければならない。

 全般的に黙って見守っているべきだと今回は判断したのであろう。随分と静かで、途中経過の報告程度しかしなかったアンジョリーヌが、ここに来てカメラの向こう側へと声をかけた。

「このクラスは、最初こそヒエラルキーによって秩序を保っていました。良くも悪くも身分制度が均衡を作り出していたのです。しかし、それを果たして団結というのでしょうか? 力関係の差による統率というのは、団結ではなく支配です。そう――私達が始めて見た彼らは、正しく暗黙の支配の下に秩序が成り立っている集団でした」

 カースト制度が絶対で、ヒエラルキーによってクラスが統制されている。何が恐ろしいかといえば、それがほんの少し前までのできごとだからだ。もはやカースト制度は崩壊してしまったが、今となっては懐かしくとも思えてしまう。

「しかし、困難を共に乗り越えて行くうちに、彼らはカースト制度という支配的な制度の殻を破り、そしてそれぞれが互いに個人を認め合うようになったのです。それこそ、本当の団結をしたのです」

 そのきっかけとなったのが【糾弾ホームルーム】だなんて、なんとも皮肉なことだろうか。多くのクラスメイトを失ってからでは遅かったような気がする。きっとアンジョリーヌ達とて国営テレビの人間。これも政府の方針の賜物たまものです――とか言い出すのだろう。

「でも、勘違いしないで欲しいのです。彼らがこうして団結できたのは、彼らの強い意志があったからだと思うのです。立ち向かう困難なんて【糾弾ホームルーム】でなくとも良かったんです。球技大会でも体育祭でも良いのです。きっと、こんなことにならなくとも、彼らはひとつのクラスとして変われていたのだと、私は思います」

 カメラの前で、わざわざそんなことを言っても大丈夫なのであろうか。でも、そうやって国にこびを売らないアンジョリーヌは、実に格好良く見えた。
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