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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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 最初からあてにするつもりのなかった鑑識官達であるが、それに加えて本田たちが会心の一発を見舞ってくれたがゆえに、一気に期待値が高まってしまった。心待ちにしていたのは、それこそ提案した本田達で間違いないのだろうが、ちょうど仕切り直しのタイミングだった安藤達にとっても、ちょうど良い塩梅での登場であった。

 鑑識官のうち一人が姫乙のところへと向かい、クリアファイルを献上する。そこから報告書らしきものを引っ張り出すと、姫乙はわざとらしく咳払いをする。

「えー、それでは待望の鑑識結果が出ましたのでぇぇ、ご報告させて頂きまぁぁす!」

 委員長と舞が降りたことにより無人となっていた教壇にわざわざ上がり、周囲の注目を集めんとばかりに手を何度も叩く。そんなことせずとも、鑑識の結果は誰もが気になっているところ。嫌でも姫乙に注目するだろうに。

「鑑識の結果、道場の天井裏からは――残念ながら、ここにいる方々の指紋は検出されませんでしたぁぁ! いやぁ、下手をすれば犯人が確定してしまいそうな、スレスレの提案ではありましたが残念っ! 犯人をあぶり出すことはできずっ! ふりだしに戻ってくださぁぁぁぁい」

 指紋は――検出されず。それすなわち、この中に天井裏へと上った人間はいないということ。言い換えてしまえば、ボウガンを仕掛けることが可能だった人物は、この中にはいないことになる。

 指紋を残さないように犯人は手袋をはめていた。そう考えれば、指紋が残っていないとしても不自然ではない。ただ、ボウガンを固定するためにガムテープを使用する際、ある程度の強度を求めるために、強くテープを巻き付けねばならないだろうし、また調整のために細かい作業も必要となる。指紋を残さない程度の厚さのある手袋を装着していると、それらの作業をする際に邪魔になって仕方がないだろう。

「姫乙、それは事実なのね?」

 芽衣が手を挙げつつ問うと、姫乙はなぜか少しばかり面白くなさそうに頷いた。

「えぇ、鑑識官は平等な立場になければいけませぇぇぇん。よってぇ、私が有利になるような不正をすることはありませんしぃ、逆に諸君らが有利になるような不正を働いたりもしませぇぇえん」

 姫乙はそう言うと、懐中時計を取り出した。鑑識官を派遣してからしばらく。前回と同じくらいであれば、経過した時間はおよそ15分くらいだろうが、今回は明らかに体感時間が長かった。
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