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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】
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どれだけ考えても、星野崎を正確に誘導する方法は見つからない。ボウガンがちょうど背中を貫くような形でかがみ、しかも背後から狙われたかのように、壁に突き刺さった矢のほうに頭を向けて倒れる。そこまで完璧に星野崎を誘導する魔法の手段なんて、あるわけがない。
本当ならば、あるわけがないと思われる手段を模索すべきなのであるが、実のところ時間があまりない。その焦りからか、プロバビリティなどという逃げの推測が出てきたのかもしれない。
ただ、プロバビリティというのも馬鹿にはできない。本格派のミステリ小説にだって不可能的な犯罪を示唆しておきながら、実は運任せの確率頼みで、たまたまそれが上手くいってしまいました――なんてオチがあったりするのだ。それこそ、現実の世界ならば確率に頼っての犯行は少なくなさそうだ。
星野崎にうまいことボウガンの矢が当たれば、犯人としては御の字。星野崎にボウガンの矢が当たらなければ、星野崎が死ぬこともなく【糾弾ホームルーム】が開かれることもない。どちらに転んでも犯人にとって不都合はない。
不都合があるとすれば、ボウガンの矢が当たった後に収束しているが、そもそも壁に刺さったボウガンは明らかに偽装だと分かるものだったし、天井裏に仕掛けられたボウガンも、いずれは見つかってしまうものだった。ゆえに、犯人からすれば上手く偽装できれば大成功。偽装できなくとも星野崎が死にさえすれば成功という程度だったのかもしれない。もっとも、今回はたまたま大成功という形で星野崎は殺害されてしまったが――。
「安藤君、あなたらしくないわね。気持ちは分からなくないけど、あまり答えを急がないほうがいいわ。無理に整合性だけを整えたところで、納得できる答えが出るはずない。時間のことは気にしないで、もう一度だけ冷静に考えましょう」
安藤の焦りは、しっかりと芽衣に伝わってしまっていたようだ。明確な答えにたどり着けないもどかしさ、推論の途中で何度も壁にぶち当たり、堂々巡りを繰り返すことの虚しさ。何度も事件を解決へと導いているがゆえに感じるプレッシャーと、謎を暴けぬ敗北感。芽衣は全てを分かった上で安藤の言葉を受け止めてくれたのであろう。分かってくれる人がいる――そう考えるだけでも、随分と気分が楽になった。
教室の引き戸が開く。嫌でもそちらに全員の視線が集まり、姿を現したのはガスマスクをつけた鑑識官達。どうやら、一仕事終えて帰ってきたらしい。
本当ならば、あるわけがないと思われる手段を模索すべきなのであるが、実のところ時間があまりない。その焦りからか、プロバビリティなどという逃げの推測が出てきたのかもしれない。
ただ、プロバビリティというのも馬鹿にはできない。本格派のミステリ小説にだって不可能的な犯罪を示唆しておきながら、実は運任せの確率頼みで、たまたまそれが上手くいってしまいました――なんてオチがあったりするのだ。それこそ、現実の世界ならば確率に頼っての犯行は少なくなさそうだ。
星野崎にうまいことボウガンの矢が当たれば、犯人としては御の字。星野崎にボウガンの矢が当たらなければ、星野崎が死ぬこともなく【糾弾ホームルーム】が開かれることもない。どちらに転んでも犯人にとって不都合はない。
不都合があるとすれば、ボウガンの矢が当たった後に収束しているが、そもそも壁に刺さったボウガンは明らかに偽装だと分かるものだったし、天井裏に仕掛けられたボウガンも、いずれは見つかってしまうものだった。ゆえに、犯人からすれば上手く偽装できれば大成功。偽装できなくとも星野崎が死にさえすれば成功という程度だったのかもしれない。もっとも、今回はたまたま大成功という形で星野崎は殺害されてしまったが――。
「安藤君、あなたらしくないわね。気持ちは分からなくないけど、あまり答えを急がないほうがいいわ。無理に整合性だけを整えたところで、納得できる答えが出るはずない。時間のことは気にしないで、もう一度だけ冷静に考えましょう」
安藤の焦りは、しっかりと芽衣に伝わってしまっていたようだ。明確な答えにたどり着けないもどかしさ、推論の途中で何度も壁にぶち当たり、堂々巡りを繰り返すことの虚しさ。何度も事件を解決へと導いているがゆえに感じるプレッシャーと、謎を暴けぬ敗北感。芽衣は全てを分かった上で安藤の言葉を受け止めてくれたのであろう。分かってくれる人がいる――そう考えるだけでも、随分と気分が楽になった。
教室の引き戸が開く。嫌でもそちらに全員の視線が集まり、姿を現したのはガスマスクをつけた鑑識官達。どうやら、一仕事終えて帰ってきたらしい。
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