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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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「おーし、ちょっと議論をやめて俺の話を聞いてくれ。これから、鑑識官の奴を使おうと思うんだが、他のみんなの意見も聞いておきたい」

 本田が手をパンパンと叩き、自分に注目が集まるように持っていく。このような議論のストップなどで時間をロスしてしまうからこそ、わざわざ議論を分割したというのに、これではまるで意味がない。それでも、やはりスクールカーストというものは身に染みついているもので、本田に対して意義を唱える者はいなかった。

「もしかすると、これ一発で犯人が誰なのか分かっちまうかもしれねぇ。でもよ、俺達からすれば、それに越したことは無ぇから、遠慮なく鑑識官の奴を使うぜ」

 一発で犯人が分かってしまう――それは、ダイイングメッセージに固執している小雪と通じるようなところがあると思うのだが、実際のところはどうなのであろうか。

「何を調べてもらうつもりでいるのかしら?」

 すっかりと舞い上がってしまっている様子の本田達に釘を刺すかのごとく、芽衣が抑揚をおさえた声で問う。何があっても平常運転。冷静のまま状況を見つめる。感情の乱れというものを一切見せずに、それどころか感情そのものシャットアウトして持ち込まない。彼女の周囲にあるのは、原因とプロセス、そして結果というロジックのみなのだろう。

「まぁ、大槻。そんな怖い顔するなって――」

 芽衣本人はそのつもりではなくとも、感情の一切合切をしまい込み、事実だけを淡々と口にする姿は、嫌でも冷たく見えてしまうものだ。きっと芽衣本人は、自分が怖い顔をしているなんて、思ってもいないのだろうから。

「私の表情はどうでもいいから質問に答えて。鑑識官をどのように使うつもりなの?」

 鑑識官はいつでも動ける状態である。しかしながら、現状においては優先させるべき存在ではないため、手持ち無沙汰になっている。他に議論すべき内容があったからこそ、後回しにしていたわけであるが――しかし、いざ使うとなると、どんな内容なのか気になってしまうのが人間というものだ。

 芽衣の言葉に本田達は顔を見合わせ、そしてもったいぶるかのごとく笑みを浮かべた。よほどの良案が浮かんだのであろうが、それはあくまでも彼らの間での話だ。いざ第三者が聞いたら、大したことではないのかもしれない。

「いいか? よぉぉく聞いておけよ。俺達は道場の天井裏に、誰の指紋が残っているのかを知りたい。そのために鑑識官にはひと仕事してもらうぜ」
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