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#3 罠と死体とみんなのアリバイ【糾弾ホームルーム篇】

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 これはある意味、先入観を打ち破った策略と言えるのではないだろうか。

 日本人というものは調和を好み、とにもかくにも周囲との協調を強調し、強要したがる。だから、議論ひとつにおいても、その場にいるみんなで話し合って決めなければならないと思いがちである。その先入観を無視して、議論の場を分けてしまう。どれを議論すべきか――という余計な部分を省き、そして同時進行で複数の議論をこなしてしまう。そうすることで時間の効率化を図ることができるのではないだろうか。

「あぁ、それいいねぇ。まぁ、真綾からすれば過去のことは水に流してみんな仲良くしようって思うけど、話し合いたいやつを話し合いたい人だけでやれば、余計な衝突はないよねぇ。これって、超平和主義じゃね?」

 言っていることはよく分からないが、真綾は芽衣の提案に賛成しているらしい。

「ほ、他の人はどう思う? 特に、反対意見があるようなら言って欲しい」

 小宮山が挙手する仕草をしつつ、教室中へと問う。反対意見を口にする者はいなかった。

「いいと思う。それぞれ少人数で議論を分担すると考えればいいだけだし、後で結論だけみんなに報告すれば問題ないんじゃないかしら?」

 小雪も芽衣の意見に賛同する。これで一応、それぞれの主張をした張本人達からの了解はとれた。後は実行に移すだけだ。

 鑑識官をとりあえず動かし、新たな情報を得ることによって事件の進展を目指す真綾グループ。

 星野崎の残したメッセージに着目し、それを解き明かすことで犯人の正体を明らかにしようとする小雪グループ。

 最後に、ある一点に集中せずに、事件の流れに沿って全体を見渡すことにより、真相を探し出そうとする芽衣グループ。

 このような議論の分散は、姫乙的にも問題ないのだろうか。いつもならば口をすぐに挟んでくる姫乙が、妙に大人しいことだけが気になった。

「で、では――。それぞれ議論したいなと思う主張をしている人のところに集まってみてください」

 幸いなことに教室は広く、机も馬鹿みたいに余っている。そして、このように意見が割れるのが分かっていたかのごとく、真綾、小雪、芽衣の距離が程よく離れている。これならば、少人数が集まってグループディスカッションを行うにも絶好の環境である。

 小宮山の一言で教室が動き始める。安藤は最初から芽衣の意見に賛同しているため、当然のように芽衣のところへと向かう。
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